巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

ワイドショーのレポーターがやってきた話


それは03年11月11日のことであった。

オレは朝9時起床し、メールのチェックや昨夜の仕事の整理をし、自主映画のプロデューサーに連絡をしたり、知り合いの新聞記者から電話をもらって「こんど飲みましょう」などと、話しをしたりしていたのである。

こういう風に書くと、いかにも積極的で派手派手しい生活をしているように思われるかもしれないが、実のところ、オレは大変な出不精で、人と会話をするのがあまり得意ではない。こう見えて内気なのだ。

大体、職業からして人を会わず、一日中こもりっきりの仕事だし、唯一やるスポーツも、地下の武道場や薄暗い体育館の片隅で、人の首を締めたり殴りあったりするものであるのだ。


ただ……、オレが人と少しばかり違うのは、実に大した事のない、しかし人が経験するようでしない事件に出合ったりしてしまうことであろう。

おかげで、霊能者を自称するあやしい人から、いろいろといわれたりすることもある。


例えば、オレに好意を抱いていると思われる霊能者からは

大変な強運の持ち主

だの

他人にハッピーをもたらす人

だのといわれ、悪意をもっていると思われる霊能者を自称する人からは


悪魔使い

祟られ屋


などといわれてしまうのである。
(両方、複数の霊能者と自称する人にいわれたことがある)


そしてきょうも、大した事ははないけれど、ちょっとおもしろいこと(?)があったのである。

オレは午前中、ひとしきり自分の用事をすませると、所用で知り合いの事務所へ向かったのである。

知り合いのところで作業をしていると、知り合いは「ちょっと用事があるので30分ほど出てくる」といって、事務所をでていったのだ。

それからしばらくして、ドアをたたく音が……

それでドアを開けてみると、どこかでみたことのあるような、ないような人が立っているではないか。

その人は手にマイクを持っている。
そしてその後ろにはテレビカメラを構えたカメラマンが……

その人がいった。


テレビ朝日の者ですが」


それで思い出した。

この人は、ワイドショーのレポーターさんだったのである。どうりでごこかで見たことがあると思ったわけだ。

オレは思った。


(さては、オレのあのグラビアアイドルとの密会がバレたのか? それともあの政治家との黒い癒着が発覚したのか!?)


と、勝手に思ってみたのだけど、考えてみれば、オレはグラビアアイドルも政治家も、それほと親しい人はいないのだ。


(するとあの悪事がバレてしまったのか!?)


と、思いつつ


「なんでしょう?」


と、沈着冷静に聞いてみる。


「あの先日、ここでおきた殺人事件についてお聞きしたいのですが」


殺人事件??

オレは人なんか殺した覚えはないそ!!




オレは犯人じゃねぇ! 冤罪だ!オレは無実だ!!





と、心の中で七転八倒しつつ、なお沈着冷静にオレは聞いた。


「殺人事件? 知りませんなぁ」


「え? 数日前、そこのコンビニで女性が刺殺されて、この家の前で犯人が捕まったのですが、何もご存知ない?」


「あ、その事件ですか。ニュースでは知っていましたが、現場はここなのですか?」


「はい、コンビニで女性を刺した男がここの通りに走って逃げてきて、この前で捕まったのですよ、ご存知ない?」


全然知らなかった。

レポーターは、そうですか失礼しましたといって、帰っていったのである。

その後帰ってきた知り合いに聞いてみると、確かに数日前、事務所の前で殺人犯が、逃げてきて地元住民に捕まったそうである。

知り合いは、テレビに出そこなった〜と嘆いていた。

生きているといろいろな事があるもんだとは、このサイトでよくいうセリフだが、まったくもってその通りであるなと思った次第である。


それにしてもオレは、10日に一回くらいの割合で

『実に大した事のない、しかし人が経験するようでしない事件に出合う』

ことがあったりするのである。

残念なことにそのほとんどは、このサイトでは書けないことが多いのだよ。

我ながら3流漫画の主人公みたいな人生ではあるな。