巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

毒舌社会が終わりつつある


かつて昭和の時代、サラリーマンたちは会社帰りにガード下などの安い居酒屋に寄って上司や取引先の悪口を言って憂さを晴らしていました。

 

 

しかしバブルの崩壊とほぼ同時に昭和が終わり、30年にわたる平成時代を通し、さらにコロナ禍もあり、サラリーマンが安居酒屋で上司や取引先の文句や愚痴をいうという文化は随分減ってきました。

 

 

なぜ愚痴を言わない人が増えてきたのか? だって安居酒屋で愚痴を言っているおじさんって、カッコ悪いじゃないですかw

いまや「カッコ悪いことはやらない」というのが「時代の流れ」なんです。

 

 

バブル崩壊と同時に平成がはじまり、2001年(平成13)に21世紀がはじまりました。この時代に流行りだしたのが、毒舌タレントです。

 

 

女性タレントに遠慮なく「ブス」と言い放って、視聴者の笑いをとっていました。マツコ・デラックス有吉弘行坂上忍といった人たちは毒舌タレントとして人気者でした。この人たちは「みんな思っているであろうホンネ(らしきものを)を、ズバリと指摘」して人気を得てきた時代がありました。

 

 

しかしいまや「ホンネ系」や社会の怒りを暴くようなタレントは流行らなくなってきています。事実いまやマツコ・デラックス有吉弘行は、もはや毒を吐かなくなってきています。
彼らは毒舌をやめ、むしろ人々を励ますスタンスにチェンジしているのです。

 

毒舌タレントの毒は年々薄くなっている

それは日本人の感性が「毒を吐く人はカッコ悪いし、みっともない」と変化してきたからです。

 

 

かといって愚痴・悪口を言う人はいなくなりません。愚痴・悪口をいうと、脳から快楽物質が出ていい気持ちになれるというのもわかっています。

 

 

すると、愚痴・悪口をいう層とあまり言わない層に分かれてきます。それはSNSなどでも、自分の実名や裏垢など、自分の正体がバレない世界での話です。

 

 

そもそも愚痴・悪口は、それを言う人にとっては「正義」であり「人が言わないホンネ」であると信じています。

 

 

20年ほど前、ネット右翼と呼ばれる人たちが、かなり歪んだ正義を主張して注目を集めましたが、以前の勢いはありません。

 

 

一方、愚痴・悪口を言わない人たちは、愚痴や悪口を正義として叫ぶ人たちを「それはアナタに都合のいい正義でしょう」「そのホンネは、あなたのワガママではありませんか」と、かなり醒めた目で見ています。

 

 

そして少しずつ分断がすすんでいるのです。

 

 

どうやら毒舌やホンネ(と本人が思っている)ことを大声で叫ぶ人の時代は終わりつつあります。

(ちなみに毒舌と社会批判は全然違うので混同しないように)

 

 

それがわからない「これが正義だ」「これがホンネだ」と叫んでいる人は、ほんの少数の人からの賛同と、多くの(しかし何も言わない人からの)冷ややかな視線を浴びることになりそうです。