巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

健康食品という食文化

  • 食と健康の時代

 現代社会ほど、多くの人が命をつなぐためではなく、健康を意識しながら食事をしている時代は過去一度もなかったでしょう。多くの人が、ただ美味しいものをおなか一杯食べたいと願うよりも、むしろ「太りたくない」「健康が気になる」という理由から、食べ物を選ぶ時代となりました。

 

 テレビや新聞雑誌にネットなどでは、これでもかというほどの健康情報が満ち溢れているといっても過言ではありません。

 

 平均寿命は延び、終戦直後の平均寿命は男女とも50歳に手が届くかどうかだったのが、いまや男性81歳、女性87歳と30年も長生きできるようになりました。これも医学の発展のみならず栄養や食事の充実が深く関係しています。

 

  • その健康情報は正しいの?

 しかし有名な新聞や雑誌、テレビ番組だからといって、健康情報を鵜呑みにしてしまうと、かえって健康を損ねかねないということも少なくないようです。

 

 例えば、お酒の二日酔い防止にウコンのサプリやドリンクを摂取する人も多いことでしょう。しかし日本肝臓学会の報告によると、ウコンによる薬物性肝障害は全体の24.8%もあり、薬物性肝障害の中で突出して高いものでした。


 日本医師会のホームページには「通常、食事中に含まれる量であれば、おそらく安全と思われますが」と注意がなされているのです。(もちろんウコンが体に悪いという意味ではありません。過剰摂取に注意ということです)

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二日酔いや肝臓に良いとされているウコンだが、サプリなどの過剰摂取による肝障害が報告されている

 

 ブルーベリーで目が良くなるという話しを聞いたことがある人も多いでしょう。ブルーベリーエキスのテレビCMも盛んに放送されていますが、ブルーベリーが目に良いという医学データはありません。

 

 昭和の時代、鉄分が豊富と推薦されていた「ひじきの煮物」は近年、釜を鉄からステンレスに変えたことで鉄分が激減。それどころか無機ヒ素という発がん物質が多く含まれることがわかり、厚労省は現在、毎日たくさん食べないように指導しています。(これも食べてはいけないということではなく、大量に毎日食べるのはやめましょうということです)

 

 このように一般人が「健康的」「健康食」と思っている食べ物の中に、効果が証明されていないものや、むしろ危険かもしれない食品が多くあり、逆に一般人が「危険」と思っている食品がむしろ安全な場合も多くあるのです。

 

  • 消費者庁の健康食品への意見が辛辣すぎて笑えるほど

 17年に消費者庁『健康食品Q&A』という冊子を公表しました、国民の健康食品への質問をまとめたものですが、それがかなり辛辣なのです。全文を引用すると長くなるので一部要約すると……

Q.栄養の偏りや運動不足があるので、健康食品でカバーしたい。

A.健康維持の基本は「栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休養」。この3つに代わる健康食品はない。

 

Q.薬は副作用が心配。健康食品は食品なので有害な作用は無いですよね?

A.健康食品にも有害な作用がある場合がある。むしろ、保健機能食品以外の

「その他健康食品」の多くは、販売前に製品としての人での安全性や有効性の確

認がほとんどされていないので、どの程度の有害な作用があるかわからないと考

えたほうがいい。

 

他にも
【天然・自然由来だから安全とは言い切れない】

【利用者の体験談は信用できない】

【健康食品には摂取目安量がある。自己判断で指定の量以上を飲むと、健康

被害を受ける場合がある】

 などなど、身も蓋もないくらいです。確かにマルチ商法ネットワークビジネスのほとんどが、健康食品や美容に関した商品を売っていて、その効果は【?】なものが大変多いので注意が必要でしょう。

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消費者庁の『健康食品Q&A』健康食品への注意勧告が出ている。健康に気を使っている人必見!

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/pdf/food_safety_190730_0001.pdf 

  • 結局バランスが大切

 現代日本の食文化は、ただ美味しいものを食べるのではなく、健康や美容を気にするものとなりました。いまや日本女性の8人に1人が痩せすぎで、終戦直後よりカロリー摂取量が低いそうです。

 その一方で糖尿病とその予備軍は2000万人以上であったりもします。そういった人たちを狙って、悪質な健康食品会社や成分がはっきりしないサプリを販売する会社も後を絶ちません。

 高齢化ということもあり、これからますます食と健康への関心は強くなってくることでしょう。ちょっと注意してほしいのは、世間に健康情報が溢れ「●●を食べるとある病気に効果的」などといったマスコミ情報を鵜呑みにし、そればかり食べたり、その成分が入ったサプリを大量に摂取したりして、かえって健康を害してしまう人がいることです。

 100年後に「21世紀前半の食文化は健康や美容を気にするあまり、偏った食生活や健康食品を食べすぎて、健康を害する人が増えた」などと言われないようにしたいものです。

 健康的な食事は結局バランスのいい食事なんですから。

(文:食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ))