巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

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『社会の複雑性の進化によって「神」が生まれた?』について

慶応大学のプレスリリースに、おもしろい記事が出ていました。

 

2019 年 3 月 22 日
報道関係者各位
慶應義塾大学


社会の複雑性の進化によって「神」が生まれた?
-ビッグデータ解析により世界の宗教の歴史的起源を科学的に解明-
 


慶應義塾大学環境情報学部のパトリック・サベジ特任准教授、オックスフォード大学のハーヴェイ・ホワイトハウス教授、ピーター・フランソワ教授、コネチカット大学のピーター・トゥルチン教授らの国際共同研究グループは、「セシャット(Seshat)」と呼ばれる人類進化史に関する大規模データベースの構築とそのビッグデータ解析を行い、社会の複雑性の進化が原因となって、世界中の宗教や「神」の信仰が生み出された可能性を明らかにしました。本研究の成果は、英国の科学雑誌『Nature』誌に3 月 20 日(現地時間)に掲載されました。


研究グループは、1 万年にわたる人類進化の歴史的記録データ(世界 400 以上の国家に関する 20 万件以上の歴史的記録データ)について、オープンアクセスのデータベースを構築し、セシャットと名付け世界に公開しました。また、なぜ人類が大規模かつ複雑な社会で互いに協力するように進化したのか、その科学的な検証を行うために、セシャットのビッグデータ解析を行いました。研究の結果、これまで唱えられていた既存の理論に反して、「神の信仰」(※1)は、「社会的複雑性」(※2)が進化
した結果生まれたものであることが示されました。人類学者、歴史学者、考古学者、数学者、進化論者、コンピュータサイエンティストが共同して発見したこの成果は、ビッグデータ解析の発展が、人類進化の歴史や起源の解明に変革をもたらすことを示唆しています。


1.本研究のポイント
・ 1 万年にわたる人類進化の歴史的記録データについて、大規模なオープンアクセスのデータベース「セシャット」を構築し、ビッグデータ解析を行った点。


・ 神の宗教的信仰は、社会的複雑性の進化の結果であり、その原因ではないことを発見し、人類進化の歴史的起源に関する既存の理論を覆した点。

(引用:https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2019/3/22/190322-1.pdf )

 

 

 というもの。さくっと要約すると、

 

『研究グループは世界何十もの地域の専門家と協力し、過去 1 万年の世界史上の 30 の地域にあった 414 の独立した政治組織(村や国)から、社会的複雑性と宗教的信仰、その実践に関する定量的データを集めた』という。

 

 さらに『データが入手できたほぼ全ての世界地域において、神の信仰は社会的複雑さの増大に先行するのではなく、むしろ後続する傾向にあることが明らかになりました。

 

さらに、宗教的儀式は、神の信仰が生まれる何百年も前に出現する傾向にありました。

 

 これらの結果は、宗教的儀式を通じた集団行動が、人々の協力関係を促し、大規模な人類社会を形成する要因となった可能性を示唆しています。』

 

 

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この研究によると、神が人を作ったのではなく、人が神を作ったらしい

 

 つまり神の信仰は社会的複雑さ、つまり人口が増え、インフラ等が整い、社会が複雑になってから神の信仰が生まれたらしい。

 

 しかしながら、宗教儀式は、神の信仰が生まれる何百年も前からあった。

 

 むむむ・・・、神の信仰の前に宗教儀式があったとはどういうこっちゃい。

 

 ぼくのおつむでは理解が難しいので、石田雅彦さんというライターさんが書いた『ビッグデータで定説覆る?──世界史は「神ありき」ではなかった』という記事を参考にさせてもらおう。

 

 この記事によると、神の信仰なるものは天罰とか神罰といった罰を受けないために、生まれたらしい。

 

 おそらく、社会が複雑化していくと、ルールなるものが必要となる。そこでヒトは掟を作った。人を殺したら死刑とか、モノを盗んだら追放刑とか。

 

 しかしそれだけではなく、掟を破ったり、裏切ったり、嘘をついたらりしたり、悪いことをすると、神様やお天道さんが罰を与えるぞとか、死後に地獄に落ちるぞという信仰が生まれたということであろう。

 

 社会が複雑化する以前は、そういった神罰や天罰信仰ではなく、もっとたくさんの獲物が捕れますようにとか、嵐から守ってくださいといったもので、罰を受けるというものはあまりなかったのかも知れない。

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古代エジプト王のファラオは神の化身とされていた。

 そういった神罰や天罰信仰は、集団をまとめるのにおそらくとても役に立ったものだったのであろう。

 

 古代の王様というのは、神うや神の血を引いた者、神官や巫女といった宗教のリーダー的存在であることも多かったらしいので、王家が民衆を束ねるのにも便利であったのかも知れないなあ・・・

 この研究もまだこれからであろうから、まだまだ新しい説が出てくるかも知れないけど、古代宗教は政治の道具でもあったのであろうよ。

 

 

おぐらおさむ(巨椋修)拝