巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

18世紀世界の知識人は地球外知的生命を信じていた

●哲学者カントは宇宙人を信じていた

 おそらく地球に文明が誕生してから、もしかしたらそれ以前からホモサピエンスは夜空をながめながら「あの星には我々のような生命が住んでいるに違いない」と想像していたと思うのです。

 

 それは多くの神話に「神が星から降りてきた」といったものが残っているからです。 日本最古の小説「竹取物語」だって主人公かぐや姫は月世界からやってきたいわば宇宙人だったりするわけですから。

 

 古代ギリシャピタゴラスとその弟子たちは、およそ紀元前500年の時代、すでに地動説をとなえ、星々には別の世界があり、そこに人間が住んでいるに違いないと語っていたといいます。

 

 それをちゃんと論文で、どうやってET(地球外知的生命)とコンタクトをとるのかを述べたのは、大哲学者のカントでした。

 

 カントは言葉が通じないであろうETに対し「数学」や「幾何学」と使うことでコンタクトをとることを提案しています。これは現在のSETI(地球外知的生命体探査)でも実際に行われている方法であったりもします。

 

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イマヌエル・カント(世界に強い影響を与えた哲学者)

 

 この時代、西洋の知識人では「地球外に知的生命体」つまり「宇宙人」いるというのは、むしろ常識であったのです。

 

 

●大数学者ガウスが考えたETとのコンタクトの方法とは?

 カントの考えを受け継いだのが18世紀から19世紀を生きた数学者カール・フリードリヒ・ガウスです。

 

 ガウスはシベリアに巨大な「ピタゴラスの定理」の絵を描き、その溝に石油を流すことで宇宙から地球を観察しているETに地球人を発見してもらおうと考えました。

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 知的生命体なら数学ができるはずで、それが共通言語になると考えたようです。

 

 1869年あるフランスの発明家が、フランス政府に巨大なパラボラ鏡を作り、太陽光を集め、火星にむけて熱を集中させ、火星にピタゴラスの定理図を直接描こうというアイディアを出しました。

 

 フランス政府はこれを拒否するのですが、それは「技術的に無理」でも「そんなバカバカしいこと」でもなく

 

「そんなことをして、火星人が怒って戦争になったらどうする!」

 

 というのが理由でした。当時の人はそう本気で考えたのです。

 

 

 

●火星人ブーム

 その後、ミラノの天文台のスキャパレリが、火星の地表に直線を発見、やがてこの直線は人工物で火星の巨大運河であるらしいという説が流れます。

 

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天文学者ローウェルによって手書きされた火星の運河

 

 その説を強烈に支持したのが天文学者のローウェルです。彼は自分が観察した直線を手書きし、「火星に文明がある!」と主張。

 

  他の天文学者のほとんどは反対意見だったのですが大衆はローウェル説を真に受けます。

 

 その後、イギリスの作家H・Gウェルズが小説『宇宙戦争(火星人襲来)』を執筆。大ヒット!

 

 世界に火星人ブームが起こったのでした。

 

 

 

●20世紀のUFOブーム

 このときの火星人ブームは後々まで尾をひきます。火星の直線は人工物という説は否定されますが、大衆には宇宙に知的生命体がいて、襲ってくるかも知れないというイメージが住み着いたのです。

 

 1938年、俳優でプロデューサーのオーソン・ウェルズがラジオドラマで『宇宙戦争』を放送。ドキュメンタリー仕立てのこの作品を聞いた多くの人が、本当に火星人が攻めてきたと勘違いしパニックが起こったといいます。(パニックは起こっていない説もある)

 

 H・Gウェルズの『宇宙戦争』では、火星人は円筒形のものに乗ってやってくるのですが、まだUFO=宇宙人の乗り物という発想はまだありません。

 

 アメリカでUFOブームが起こるのは、20世紀の半ばから。このUFOブームの根本には、古代の人々やカントやガウスといった知識人の「宇宙には他の文明があるに違いない」というロマンあふれた思いから、やがて科学が進んだ宇宙人に地球は攻め込まれるかもしれないという異文化への恐怖と不安があるのでしょうね。

 

 

巨椋修(おぐらおさむ)拝