巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

見えない世界を考え続けた西洋文明が世界を制した


●見える世界と見えない世界を繋ぐものは宗教であり知性である

 明治維新後、日本は国を挙げて『西洋の見える知』を輸入してきた。『西洋の見える知』とはわかりやすくいえば工業や科学技術のことである。


 それはそれでいいのだが、日本人は『西洋の見えない知』はほとんど無視した。『西洋の見えない知』とは、神学や形而上学(見えない世界や神、霊などの確かめられないものの研究)のことであり、西洋の学問『見える知』と『見えない知』とつなぎ、結びつけることで発達してきた。


 この『見える知』と『見えない知』を結びつけるものをリレジョン(宗教)というがリレジョンこそ、もともと「結びつける」「縛る」という意味がある。


『見えない知』とは『見えない世界』や『形のない世界』を研究する分野である。わかりやすくいえば「神」や「死後」「心」といった分野であるといってもいいが、そのもっとも重要なところは『真理(物事の本質)は何か?』『世界(宇宙)はどうなっているのか?』を探求していくことである。


 ヨーロッパでは、こういった分野は古代ギリシャにはじまりローマ帝国キリスト教を国教にしてから、一時的に弾圧されるのであるが(なぜならキリスト教は他の神を認めず、教会の威光に沿わない科学的なもの、思想等はすべて弾圧したり異端・異教として排除してきた。例えばナイフやフォークにしても18〜19世紀になるまで庶民には広まらなかったという。理由はキリスト教では、神から与えられた指先を使わずに食事をするとは何事かという考え方があった)、しかしルネサンスの影響から『真理の追究』や『世界(宇宙)はどうなっているのか?』を探求するようになったのだ。


 ルネサンスとはキリスト教に禁じられた古代ギリシャ古代ローマの『知』を再び研究・探求することであり、その『知』は幸運なことにイスラム帝国に保存されていたのだ。さらに皮肉なことに西洋のキリスト教徒は、聖書研究自身もイスラムの研究者から学ぶことになる。つまり中世時代はバチカンが聖書研究すら禁止していたのだ。





 話しが飛んでしまった(苦笑)。


『真理の追究』や『世界(宇宙)はどうなっているのか?』『自然はどうなっているのか?』という探求、すなわち『見えない世界』や『見えない知』はその後世界を変えるほどの影響力を出すようになった。


 西洋人たちが追及した「why?(ホワイ? なぜこうなるんだ?)」「why?(ホワイ? 本当にそれはあるのか?」が世界を呑み込むことになる。





●見えない知の研究は世界をどう変えたのか?

『真理の追究』や『世界(宇宙)はどうなっているのか?』は世界にどんな影響を与えて行ったのか? 一つの例をあげればガリレオが望遠鏡を使ってはじめて天体観測をおこない、月にクレーターや山や谷があることを発見する。しかし当時の科学者はこれを大笑いした。月は神が作ったもので表面はつるつると信じられていたからだ。


 ニュートン万有引力を発見する。これも当時はトンデモと言われたが、ニュートン力学なくして現在の科学はあり得ない。


 ニュートン力学があるからアインシュタイン相対性理論が生まれた。



アインシュタインの相対論は一回りして「見える知」が「見えない知」にまでやってきたといえる)


 これら皆、『見えない世界の追及』『真理とは、物の本質とは何か?』を探求し続けてきた結果なのだ。




スピリチュアリズムをなんて訳す?

 スピリチュアリズムという言葉があります。これも『見えない世界の追及』『真理とは、物の本質とは何か?』といった「見えない知」の一部分なのだが、日本の場合残念なことにテレビで「地獄に落ちるわよ!」と叫ぶ怖いおばさんや前世がわかるというスピリチュアルカウンセラーといった人がテレビで、大ヒットしたためにスピリチュアリズムというと、かなりアヤシゲなものというイメージがついてしまった。


 おそらく多くの人がスピリチュアリズムをどう訳すとしたら『心霊主義』であるかも知れない。スピリチュアリズムは他の意味もある。


 その「スピリチュアリズム」の対義語は「リアリズム」という。


「リアリズム」を日本語でいうと「現実主義」であるが、哲学用語なら「実在論」である。


スピリチュアリズム」」を日本語でいうと「心霊主義」であるが、哲学用語なら「唯心論」である。


 西洋においてはこの二つの認識論が車輪の両輪となり、やがてヨーロッパは全人類に決定的な影響を与えるようになる。




現代社会に限りなく影響を与えた西洋文明

 東洋、とくに中華文明も古代に人類に大きな発明をしている。羅針盤、火薬、紙、印刷は人類に限りなく大きな影響を与えた。


 しかし中華文明は、『見えない知』や『真理の追究』については、それほど熱心ではなかった。
 

 そのため21世紀に生きる人はみな西洋、つまり欧米の強い影響下にある。


 西洋文明によって現在にもたらされたものとして、資本主義、社会主義、民主主義といった政治経済思想。


 自動車、飛行機、スクリュー式船舶、電車といった移動機械。


 世界中を見渡しても、ほとんどの民族は民族衣装を捨て西洋の衣装を来ている。音楽も世界どの国にいっても流行っている音楽は西洋の楽器を使い、西洋人が考えた楽譜に西洋人が考えた12音階で作曲している。


 これは目に見える知や物質的なものだけを追い求めるのではなく、目に見えない何かを追い求めてきた西洋文明だからなしえたといえる。


 わかりやすく言えば、この世を成り立たしている真理とは何か? という問題を問い続けた賢者は、やがて自然というものを注目するようになる。最初は目に見えない『この世を成り立たしている真理』を探していたのが、この世のことわりとして『物理学』に発達したり、『生物学』のような自然科学に発展する。


 目に見えない神の実在について調べて行ったら、例えば ニュートンはその研究のほとんどが神の実在についてのものであったのだが、万有引力の法則を発見してしまう。


 これらは中華文明にもイスラム文明にもなかった独特の学問的発達を生み、同時に西洋が世界のほとんどを植民地にしてしまうほどの物理的実力をつけたのである。

 



 上の図は、青色が西洋の植民地だったところである。中華世界とイスラム世界、日本以外はほとんど西洋の植民地となっているのがわかる。


 古代ギリシャから続く『真理とは何か?』『自然とは何か?』という知的探求心は、やがて全世界を制したといっても言い過ぎではないだろう。


 日本人も明治になってから、西洋から「目に見える知」を学び、取り入れてきた。しかし「目に見えない知」はあまり取り入れていない。


 それどころか、日本古来からあった「目に見えない知」すらも忘れそうになっているように思えるのだ。


 日本人はもっと『目に見えない何か?』について真剣に考えなければいけないのではないだろうか?


 

わたし(巨椋修(おぐらおさむ))が監督した映画『不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか? 』DVDになりました。
精神科医不登校に携わる皆さんにインタビューをしており、問題解決のヒントになれば幸いです。
TSUTAYA』のドキュメンタリーコーナーにも置かれておりますのでご覧になってください。


●巨椋修(おぐらおさむ)の著書



ビックリ!おもしろ聖書物語 (リイド文庫)

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新版 丹下左膳

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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。

陽明門護身拳法のHPはコチラ。門下生募集中!
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