●異様にキリスト教徒が少ない日本
日本におけるキリスト教徒の数は先進国の中でもっとも少ない。それもそのはずでG7の中でキリスト教国でないのは日本だけ。
ちなみに日本人のキリスト教徒率は人口の1%以下である。お隣の韓国は29%、香港10%、台湾10%、80年までキリスト教を弾圧し、いまだに「宗教はアヘンである」との考えを捨てない中国でも、近年急速にキリスト教が広まり一説によると10%程度と近隣諸国は、日本よりはるかに多い。
日本では町を歩けば結構キリスト教会を見かけるので、クリスチャンなもっと多いそうだが、なぜか日本ではキリスト教は広まらないのだ。
●戦国時代のほうが多かったクリスチャン
おもしろいことに戦国時代はキリスタンが30万人もいたという。スランシスコ・ザビエルが来日して、わずか数十年で急速に信者を増やしているのだ。
いまの日本のクリスチャン約100万人。戦国時代のキリスタン60万人。
いまの日本の総人口1億2700万人。戦国時代末期の総人口推定2000万人。
つまり戦国時代の終わりくらいには、日本の総人口の3%、いまの日本の3倍ものキリシタンがいたことになる。
(フランシスコ・ザビエル Wikipediaより)
●なぜ戦国時代にキリスト教が広まったのか?
戦国時代になぜこうもキリスト教が増えたのであろうか? それは日本に伝わったのがイエズス会のキリスト教であったからと考えられる。
イエズス会はカトリックの最大の教派であり、当時急速に信者数を増やしていたプロテスタントに対抗するために作られた組織で、最初はヨーロッパで対プロテスタントとして活動していたが、やがて中南米やインド、日本に布教活動をした教派であり、日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルはこのイエズス会の創設メンバーでもある。
イエズス会は未開の地やキリスト教がまだ伝わっていない地域に布教にいくため、その土地や風習に合わせ、キリスト教の本質さえ変えなければ、他のところは少々変えても目をつむるという布教の方法をとったのだ。ちなみにカトリックは神父のような専門職以外、プロテスタントよりゆるいのだ。それは聖職者が一般信者と神との橋渡しをしてくれるため、一般信者はそれほど戒律にしばられない。
プロテスタントは神と人と一対一の契約関係にあると考えるから、一般信者も決して油断はできない。
それが、カトリックのイエズス会の場合、聖職者はより厳しく、現地の一般信者はヨーロッパの一般信者よりもはるかにゆるいというわけだ。
例えば、カースト制度の強いインドでは、イエスは貧しい大工の息子で馬小屋で生まれたのではなく、最上位のカーストでバラモンの家に生れたとしたという。
日本の場合、まず南蛮との交易で利益を得る代わりに布教の許可をとるという方法で布教をはじめ、信者にはヨーロッパの信仰方法を押し付けるというより、日本の伝道や風習を重視して布教していったという。
最初キリスト教はゼウス(神)を「大日」と訳した。そのため日本の仏法僧はキリスト教を仏教の一派と勘違いしたらしい。また当時、仏教用語を使って布教をしたため、仏教的宗教として、日本人にとって入りやすかったのかも知れない。
さらにいえば、日本にはキリスト教と似た思想の宗教が根付いていたことも戦国時代にキリスト教が広まっていったことと無関係ではあるまい。
まず、キリスト教の天地創造と、日本神道の天地開闢はとてもよく似たストーリーなので親しみやすかったに違いあるまい。
また、日本にはキリスト教と非常によく似た浄土宗、浄土真宗といった浄土教が広まっていた。
浄土教は、阿弥陀如来を信じたら、やがて西方浄土にいけて救済されるという教え。キリスト教はゼウス(神)を信じたら、やがて天国にいって救われるという教えと似ているのだ。また、どちらも罪びとであっても救われると説く。
(参照:浄土教とキリスト教)
そういったことが重なって戦国時代はキリスト教が現在より広まっていったのではないだろうか?
もっとも秀吉や家康は、宣教師たちがキリスト教を広めた後に、南蛮人たちが日本人を奴隷として海外に売ったり、宣教後に当地を植民地化したり、あるいは日本のキリシタンが神社や仏閣を焼き討ちする事件が相次いだため、キリスト教を禁止する処置をしている。
●なぜ明治以降の日本でキリスト教は広がらなかったのか?
徳川幕府は250年の間キリスト教を禁教とした。その縛りは強く、明治維新後も新政府は日本人にキリスト教を信仰することを禁止し、明治になってから出て来た長崎の隠れキリスタンの指導的立場の信者100人以上を逮捕している。日本でキリスト教の禁教が解かれたのは明治6年になってからである。
そして明治から現在に至るまで、日本のキリスト教人口は1パーセントに満たないままなのだ。なぜ日本人にキリスト教が広まらないのであろうか?
戦国時代は、大変な勢いで広まったキリスト教が文明開化の時代、さらに大東亜戦争後、キリスト教大国アメリカに実質支配されてきたにも関わらず、なぜ広まらなかったのであろう?
福祉や学校教育に力を尽くしてきたのに・・・、宗教学者の島田裕巳氏がいうには、「小学校から大学まで、宗教を背景とした学校は全国に849校あるが、そのうち565校がキリスト教系で、全体に占める割合は66.5パーセントにも及ぶ。つまり、3分の2がキリスト教系の学校」であるにもかかわらず・・・
理由がある。日本人はなんでも自分流にアレンジしてしまう癖がある。日本には仏教伝来の前には、神道という宗教があった。中国から仏教が入ってきたとき、神道と仏教は集合した。
日本に仏教が来て、最初に仏教僧になったのは善信尼という女性なのだ。これは神道では巫女がシャーマンとなって神道の神々を祀っていたため、仏教でも同様にしたと考えられている。
また仏や菩薩が垂迹(すいじゃく・仏や菩薩が仮の姿で現れること)したのが、日本の神々ということにした。つまり阿弥陀如来=八幡神、大日如来=伊勢大神という具合に。
戦国時代のゆるういキリスト教も、おそらく日本人独特の「ありがたい神様だんだから・・・」という日本のゆるい宗教観から受け入れられたのではないだろうか? ただしゆるいからといって大人しいわけではない。南無阿弥陀仏と唱えれば救われるとい教えの浄土教は、戦国時代、信長を最後まで苦しめた武装集団でもあった。キリシタンたちも神社や寺を焼き討ちしたり、天草四郎の乱のごとく城に籠っての戦争をしているのだ。
(ぼくにとっての天草四郎は映画『魔界転生』のジュリーかも(笑))
●日本人は宗教的に縛られるのが大嫌い
前述したように、日本は在来宗教である神道と外来宗教である仏教を集合させた。さらに儒教はその宗教性を排除し、学問として取り入れた。
つまり日本には神道+仏教+儒教が混濁した中で日本文化を作ってきた。なぜそんなことになったのかというと、元々神道の物語は、高天原という天上から来た天津神という神と、国津神という地上の神々の土地を侵略する物語がある。
しかし天津神は国津神を排除するのではなく、出雲大社に代表されるがごとく神とし祀り続けた。勝者が敗者を取り込んだのである。これは将棋でもいえる。チェスにしても中国や韓国の将棋でも、取った駒を味方にして使うことができないそうだ。日本は、敗者にたいして滅ぼすのではなく、取り込んでいこうとする。
取り込んでどうするのかというと、「なあなあ」ですましてしまうのです。
日本人は他国の宗教にある規律、戒律、契約といった「宗教的にめんどくさい」ことが大嫌いなのです。
織田信長が比叡山を焼き討ちしたとき、女人禁制であるはずのお寺に女子どもがたくさんいたというのは有名な話し。明治になって新政府がお坊さんも結婚してもいいよっていうと、日本中のお坊さんがポンポン結婚したのはご存知の通り。
もしお坊さんが戒律とかを重視していれば、「結婚してもいい」って政府がいっても、「いえ、御仏におつ返し、さらなる修行のため私は独身を貫きます」となるはず。結婚しなくても罪には問われないんだし。
ところがお坊さん自身が、そんなもんどうでもいいやって思っているから、ポンポン結婚したのよね。東南アジアや東アジアの仏教界では考えられないことですよ。だから東南アジアの僧侶の中には日本の僧侶を僧侶と認めない人がいるくらい。
これが日本の特徴。でも明治以後にやってきたキリスト教は、戦国時代のイエズス会のようなゆるいものじゃなくて、ちゃんとしたキリスト教だから日本人には馴染まない。イスラム教はもっと馴染まない。だから文明開化から150年たってもキリスト教信者は1%程度なのです。
その1%も、他国のキリスト教徒からみたらかなりいい加減なキリスト教徒。日本のクリスチャンって初詣に行ったり、お盆ではご先祖に線香あげたり、七五三やったりするんです。だから日本独特のいい加減なキリスト教団が生まれたら、もっと杖るかもしれない。実は戦前戦後の神学者で魚木忠一という人はそれを考えていたらしいのだけど、いまだにそれは現れていない。やはり日本人には厳しいキリスト教は向かないようだ。
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