巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

ルターとユダヤ人虐殺の歴史


宗教改革者の裏の顔
 「神は乗り越えられる試練しか与えない」という言葉をご存知の方も多いと思う。この言葉をいったのは、宗教改革で有名なマルティン・ルター


 宗教改革の旗手ということでルターは人格者であると思われがちであるが、ルターには暗い一面もあった。熱心なキリスト教修道士であったルターは、誰よりも異教徒を憎んだ男でもあったのだ。



 中世キリスト教史の汚点として「魔女狩り」や「異端審問所」があるが、これらに対してルターは烈火のごとく怒ったのである。





  「手ぬるい!」と…。




マルティン・ルター



旧教(カトリック)に対し新教(プロテスタント)を起こしたルターは、積極的に魔女狩りを行い、数多くの無実の人々を殺した男でもあるのだ。


 魔女だけではない。若い頃のルターは、ユダヤ人に対して、比較的寛容であったが、やがてユダヤ人たちが頑としてキリスト教に改宗しようとしないことに業を煮やし「ユダヤ強制収容所」「ユダヤ人の旅行と金融業の禁止」「ラビによる教育の禁止」「タルムードの没収」「ユダヤ人の追放」「ユダヤ人の強制労働」などを実行した。




ユダヤ人の財産はすべて我々のもの!
 ルターは言った。
 ユダヤ人は、元々流浪の民なのだから、本来一文無しのはずだ。彼らが所有するものはすべてもとはわれわれの財産だったのだ」(定方晟著 洋泉社刊『憎悪の宗教』より引用)




 宗教家とも思えない言葉だが、元々キリスト教には、イエス・キリストを処刑したユダヤ人対する憎悪の念があり、ユダヤ人や異教徒を攻撃しても良いとする教えがあった。エスをはじめキリスト教の礎となったパウロや12使徒自身がユダヤ人であったにもかかわらずだ。


 聖書にはこう書かれている。

ユダヤ人たちは主イエス預言者たちとを殺し、わたしたちを迫害し、神を喜ばせず、すべての人に逆らい、わたしたちが異邦人に救いの言葉を語るのを妨げ、絶えず自分の罪を満たしている。そこで、神の怒りは最も激しく彼らに臨むに至った。」
新約聖書テサロニケ第一の手紙 2章15〜16節)


 これを書いたのは使徒パウロとされている。元々パウロはイエスの弟子たちを激しく憎み、迫害していた人物で、パウロ自身新約聖書のガラテヤ1章13節に「私は激しく神の教会(イエスの弟子たち)を迫害し、これを滅ぼそうとした」と書き残しているくらいだ。


 パウロはイエスの直弟子ではなく、イエスの死後イエスの声を聴き、目から鱗が落ちるような思いをして改心したという。これが「目から鱗が落ちる」の語源であり、パウロの改心は「サウロ(パウロの昔の名前)の改心」として有名である。


 ちなみにいまのキリスト教パウロの影響が強く、キリスト教といいながらパウロ教といってもいいくらいなのだ。なぜならパウロはイエスの言葉の真逆の言葉を数多く残し、それをその後のキリスト教徒たちは実践してきたからである。くわしくは拙著『ビックリ! おもしろ聖書物語』をご覧いただきたい。



 ともあれ、パウロの発言によって、ユダヤ人はキリスト教徒から現代にいたるまで迫害され続けることになるのだ。


 これにより、中世悪名高い魔女狩りや異端審問初所もはじまってしまうことになる。異端審問所や魔女狩りによって、数万人のユダヤ人をはじめとする異教徒たちが、財産を没収され殺されたのは、キリスト教史の位史実である。ルターもその1人であった。


 
 
●ルターを見習ったナチスドイツ



 このルターによるユダヤ人迫害を見習ったのが、ナチス・ドイツである。



 キリスト教徒によるユダヤ人への迫害が、もっともひどく、大掛かりに行われたのが、ナチス・ドイツの「ホロコースト」や「アウシュビッツ事件」であった。


ホロコースト」とは【すべてを焼き尽くす】という意味であるが、ナチス・ドイツの政策で、ユダヤ人だけではなく、共産主義者やロマ人(ジプシー)、スラブ民族ポーランド人や障害者も、虐殺の対象とされた悲劇である。この政策で、ユダヤ人は600万人、他の人々も含めると1千万人もの無実の人間が殺されたのだ。


 ちなみいまでも根強くある「ユダヤ陰謀論」は、ヒトラーユダヤ人大虐殺を行う20年ほど前に、ロシアの秘密警察がユダヤ人を貶めるために書いたとされる『シオンの議定書』にはじまる。

 
この『シオンの議定書』にはユダヤ人が世界を征服するといった、いささか子どもじみた内容なのだが、現在日本の人たちの中で、外国人に対してヘイトスピーチを繰り返す人たちが、ささいなことを歪んで解釈するのと同じように、ヒトラーはこの本を利用した。その結果、強制収容所等で無実の人が1千万人も亡くなったのである。


 ルターによって起こされた宗教改革カトリックプロテスタントという宗教戦争になり、ナチス・ドイツの手本となり、また、魔女狩りの伝統はアメリカ合衆国に渡っても行われた。


 黒人を虐殺することで有名なKKK団は、最初熱心なプロテスタント教徒が、黒人、ユダヤ人だけではなくカトリック教徒も処刑を実行している。過激なプロテスタント信者にしてみれば、カトリックは異教徒であるからだ。



 宗教は万人を救う一方で、一つ間違えば大変な悲劇を生むという一つの例であろう。おそらく人類にとって宗教は不可欠なものであろうから、今後の人類は宗教を平和にのみ利用して欲しいものだと願ってやまない。




巨椋修(おぐらおさむ)拝





FHN放送局
巨椋修(おぐらおさむ)拝



わたし(巨椋修(おぐらおさむ))が監督した映画『不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか? 』DVDになりました。
精神科医不登校に携わる皆さんにインタビューをしており、問題解決のヒントになれば幸いです。
TSUTAYA』のドキュメンタリーコーナーにも置かれておりますのでご覧になってください。


●巨椋修(おぐらおさむ)の著書



ビックリ!おもしろ聖書物語 (リイド文庫)

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新版 丹下左膳

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