巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

ネットデマを信じる人の傾向

●都市伝説・デマ・流言はネットに乗って一瞬に拡散する

 都市伝説というものがある。 

 一般に都市伝説とは


【本当にあったとして語られる『実際には起きていない話』である。実存しない可能性が高い人間が体験した虚偽についての物語】


 とされているお話しのことだ。


 その中には幽霊や妖怪、陰謀論といったものや、現実に会った事件事故の裏話しといったモノまで含まれる。


 中には大災害時のネットデマ、流言、ネット情報も都市伝説と化することがある。


 デマとは【誰かが意図的に広げる作り話】のことであり、流言とは【自然に広がる不確かな噂】のこと。


 以前、ちょうど「週刊SPA!」さんから都市伝説についての取材を受けたことがある。





 かつて警察が調べたところ、噂やデマ、都市伝説は汽車や電車と同じ速さで伝播したという。しかしネットが普及してからは、一瞬といってもいい速さで全国、全世界へと伝わる。そんなことをお話しした。

 そしてその取材と受けた半月後に東日本大震災が起ったのだ。

「週刊SPA!」のときにお会いした評論家の荻上チキ氏はそのときのネットデマを調べて、早急に本にしている。


荻上チキ著【検証 東日本大震災の流言・デマ】)


 大災害の時にデマ・流言が大量発生するのは、みんな不安に襲われるため、デマや流言を信じやすい心理状態になっているからだ。


 普段なら「そんなバカな」ですますような情報や「じゃあソースを調べてみようか」と思うようなことでも、恐怖や不安、パニックのときには信じてしまう。



●精神的に不安定な人ほどデマ・流言を信じやすい

 人は不安になったときにデマ、流言を信じやすくなるということは、平時においてデマを信じやすい人というのは、心に不安を抱えた不安定な人ほどデマを信じやすいということでもある。また感受性が高い人もデマ・流言・都市伝説を信じやすい。


 1938年10月30日、ハローウィンの特別番組としてアメリカのCBSラジオで流されたラジオドラマ『宇宙戦争』が流された。ご存じの通り火星人が地球を侵略しにくるというSF小説が原作であった。このラジオドラマはラジオニュースの形式を偽報道ドラマであったため、聴いた人の多くが「火星人が本当に地球侵略に来たんだ!」と、勘違いしパニックを起こしたという事件がおきた。



 その事件を『ニューヨーク・タイムズ』は、翌日の朝刊で、「Radio Listeners in Panic,Taking War Drama as Fact戦争(戦争ドラマを事実と勘違いしてラジオ聴取者がパニックに)なった」と、1面で大きく伝えたほどであった。


 アメリカの心理学者で、この事件を研究した『火星からの侵入 パニックの社会心理学』の著者であるハドレー・キャントリルは、このドラマを聴いていたのが600万人、そのうち少なくとも100万人がこの偽報道ドラマを事実と勘違いしてパニックをおこしたりしたという。なんと実に6人に1人が信じたのである。

 
 もっとも、この話しは大げさで、新聞社が当時はまだ新興メディアであるラジオをバッシングしただけで、それほどパニックは起きなかったという説もあるのだが、警察に問い合わせの電話が集中したりかなりの影響があったのは事実のようだ。


 また、この事件が話題となりマネをしたラジオ局があった。この放送の翌年1939年、場所は南米のエクアドル。この国の国営放送局がアメリカとそっくりの番組をエイプリルフールのジョーク番組として行ったのだ。

 このときもパニックが起こり、やがてこれがジョーク番組と知った市民たちは大激怒!


 人々は暴徒と化しラジオ局に乱入! 番組出演者6人を含む21人が殺害され、負傷者100名以上という大惨事になってしまったのである。


 この時代は、第二次世界大戦が勃発した時代であり、エクアドルは政治的にも混乱していたまさに不安と不安定の時代ですから、人々が偽報道を信じやすくなっていたのかもしれません。



●知性的な人ほどデマ・流言・都市伝説に流されにくい

 アメリカの火星人襲来事件を研究したアメリカの心理学者アメリカの心理学者キャントリルは、「パニックになってしまった人々は、教育レベルが低い人が多かった」と、指摘している。


 教育レベルの高い人々は、【火星人襲来】という大ニュースならば、CBSラジオ一局だけではなく、他のラジオ局も報道しているはずだと判断し、他局のラジオニュースを聴いたり、被害を受けたとされる地域の人に電話をして裏を取ることで、このラジオドラマが作り物であることを見破り、パニックになることはなかったという。


 他にもドラマの中にあるちょっとした矛盾に気が付いたり、これがSF小説の『宇宙戦争』だと気が付いたりした人もいた。


 しかし、そういったことに気が付かず、町に出てみると、車がたくさん走っているのをみて(いつも通りであるにもかかわらず)「これはみんな火星人から逃げているのだ」と思い込んでしまった人や、ラジオという公共放送でやっているからと情報を鵜呑みにしてしまった人も多かったという。


 2012年マヤ暦で世界が滅亡するという説を信じた人について、世界トップの調査会社『イプソス』のケレン・ゴットフリードは「教育水準や収入が低い人ほど、世界終末を信じたり、マヤ文明の予言に不安を感じる傾向が強い」 と述べている。
(引用:『米国人の2割「世界の終末近い」、マヤ予言も影響=調査
より)


 心理学者キャントリルも調査会社『イプソス』のケレン・ゴットフリードも、デマ・流言・都市伝説を容易に信じてしまう人は「教育レベルが低い」と指摘していることは注目に値する。


 逆にいえばデマ・流言・都市伝説に流されにくい人というのは、教育レベルが高い人、知性的な人であるといえるかも知れない。


 知性的な人というのは、学歴が高いとかテストの成績が良いということではない。

 教養があり好奇心が強く、それでいて自分と違う意見を尊重する人のことだ。だからこそデマ・流言・都市伝説といった噂を鵜呑みにはせず、ソースや裏付けを検討し判断する人のことである。


 いまやデマや噂はネットという媒体から、たちまち広がっていく。くれぐれも知性を発揮して、そういった情報に流されないようにしたいものである。


 と・・・ いいつつ私はあまり自信ないな(笑)。



巨椋修(おぐらおさむ)