巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

お寿司のはなし



●江戸時代に生まれた握りずし

 いまや日本を代表する料理であるお寿司。ひとくちにお寿司といっても、いろいろと種類がありますが、おそらく多くの人が「お寿司」と聞いてイメージするのは、江戸前ずし、つまり握りずしではないでしょうか?


 他にイメージするとしたら、太巻きや稲荷寿司、五目ちらし寿司といったところが一般的といってもいいでしょう。


 そんなお寿司ですが、原型は「なれずし」といって、飯の乳酸発酵を利用したもので、代表格としては琵琶湖に伝わる「鮒ずし」


 これはなかなか個性的な臭気がして、はじめての人はなかなか食べるのに勇気がいる品物。このままでは、世界の人気料理になることは難しかったことでしょう。「なれずし」は臭気が個性的というだけではなく、作るのに数週間から場合によっては数年もかかるのですから。


 それがやがて江戸時代になると、もっと早く食べたいと「箱ずし」が考案されます。さらにもっと早く食べたいと「押しずし」が生まれます。それでも作るのに2〜3日かかります。


 もっともっと早く食べないとさらに「早ずし」というものも考案されました。これはネタと酢飯を一夜漬けしたもので、いまでいうと富山の「鱒(ます)寿司」とか、和歌山の「鯖(さば)寿司」とかが有名です。


 ところがせっかちなことで有名な江戸っ子。一晩も待ちたくないと思ったのか、江戸時代後期の文政年間あたりに、酢飯を握って味付けをしたネタを乗せるというものが登場。


 この時代、まだ刺身を酢飯に乗せるということはあまりなかったようで、ネタは魚を醤油漬けにしたものや、酢でシメたもの、火を通したものが主流であったようです。



 なぜかというと、カンタンなハナシ、江戸時代には冷蔵庫もなく、自動車もなかったため、漁港に持ち込まれた魚が料理人の手元に持ち込まれ、お客の前に出るまでに、ネタである魚が傷んでしまうおそれがあったため、醤油漬けや酢漬けで傷みにくくしたものしか出しにくかったというわけです。



 刺身のネタが主流になるのは、冷蔵技術や自動車や鉄道といった流通が発達してからだったようですね。


 それにしても「はやく食べたい」「せっかち」が、寿司の主流である握りずしを生んだというのは、おもしろいものですね。





● 海外の寿司は日本の寿司にあらず?

いまやSUSHIといえば世界中で食べられているといってもいい料理。


世界的人気のお寿司ですが、もしあなたが海外にいって寿司屋に入ったら「?」となるかも知れません。


また、自称お寿司大好きな外国人を日本の寿司屋に連れていったら、こんどは外国の人が「?」となるかも知れません。


例えばアメリカの、寿司バーか寿司レストランに行ったとしましょう。そこの主流は寿司ライスにスライスした生魚が乗ったものではなく、いわゆる巻き物が中心。


それも鉄火巻きとかカッパ巻きなどというものではなく、カリフォルニアロールに代表されるような海苔を表に出さないで裏巻きし、ライスが表に出ているものが多いのです。


ちなみにカリフォルニアロールをご存知ない方のために説明しておくと、具はカニかまぼこ、アボガド、キュウリ、白ゴマで海苔を裏巻きにしたものです。


これは1960年代末、ロスアンゼルスに寿司バーを開く日本人が、考案したものですが、欧米の人は海苔を、「紙を噛んでいるみたい」と気味悪がる人が多いため、海苔を表に出さないものが多いのです。



もし、腕のいい日本の寿司職人がアメリカに行って、日本伝統の技で勝負しようとしても無理だといいます。それは、やはり生の魚を食べることへの抵抗が強いことが原因。


でもそれは寿司ではないのでしょうか?





もちろん、それも寿司!





かつて寿司が「なれずし」しかなかった時代の食通に、もし江戸前の「握りずし」を出したとしたら、その時代の人は「握りずし」を寿司と認めなかったかも知れません。



しかし「握りずし」は立派なお寿司!



お寿司に限らず料理というものは、その時代、その地域でそれぞれに発達し進化していくものなのです。


例えば、わたしたちがいま当たり前に食べている「軍艦巻き」というお寿司は、昭和になってから創作されたものです。




● 昭和生まれの軍艦巻き

軍艦巻きは、昭和16年、銀座の超高級寿司店久兵衛」の今田寿治が、客から「何か変わったものを」と、言われたとか、「イクラを寿司で食べたい」と言われたとかで、考案したといわれています。


それまで、イクラとかウニというのは、なかなか握りになりにくかったわけで、軍艦巻きのような形にすると、ネタがこぼれずにいただけるというわけです。


昭和16年というと、日中戦争真っ盛りであり、同時に太平洋戦争が勃発した時代。


軍艦巻きのネーミングも、形が軍艦に似ているから付けられたわけですが、そういう時代背景もあったのかも知れませんね。





鉄火巻きとサンドイッチ

 パンにおかずを挟んで食べるサンドイッチは、一説によるとイギリスのサンドウィッチ伯爵は、トランプゲームなどギャンブル中でも食事ができるようにと考案したという説があります。


 一方日本の「鉄火巻き」これも一説ですが、「鉄火場」つまり博打場で、手早く食べられるように作ったのが「鉄火巻き」という説があります。


 洋の東西を問わず、賭け事というのは、ものを食べるのも惜しくなるくらいおもしろいものなのでしょうね。


 鉄火巻きは、マグロの細巻き寿司ですが、このマグロの赤い色が、鉄が焼けた状態に似ているから「鉄火」というようになったという説もあります。


 ギャンブルも熱くなりがちですが、ひとつ間違えると身を滅ぼしますので、そこはほどほどにs(笑)。




● 稲荷ずしってなんで稲荷?

稲荷ずしって、油揚げに寿司めしを詰めたものですが、なんで油揚げを「稲荷」っていうか知ってます?


狐が油揚げが好きだから……という説があるんですけど、そもそも狐はなんで稲荷なのって思ってしまいますよね。


稲荷っていうのは、稲をはじめとする五穀の神様。そして狐はそのお使いということらしいんですね。なんでそうなったかというと、お米とか穀物を食べるネズミを狐が食べて退治してくれるところから来ているそうなんです。


そして狐の好物が油揚げってことで、油揚げ=稲荷=狐ってなったという説があるんですね。でも、実際のところ、狐は油揚げなんて好物じゃないわけで、これも一説なんですけど、「ほんとうは狐の好物っていうのは、ネズミを油で揚げたもので……」なんて説もあるんですけどね。正直、ネズミを油で揚げるような人ってまあいないと思うのですよ。


だから、そんな細かい由来から来ているというより、油揚げが狐色だったから、油揚げのことを狐っていうようになり、狐=稲荷神のお使いだから……というのが、おそらく正解なんでしょうね。


ちなみに、この稲荷ずしですけど、関東と関西では、ちょっと違っています。


関東の稲荷ずしは俵型、関西は三角形。さらに関西の稲荷ずしにはいろいろな具が入っていますが、関東は酢飯のみという違いがあるんですよ(笑)。








巨椋修(おぐらおさむ)拝





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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。

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