巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

この世に存在していないのに、この世でもっとも役に立っているもの【それは数】

●数の発明

 人類がいつごろから数というものを発見・発明したのかはよくわからないが、実はコレって物凄いことなのだ。おそらく最初は、たくさんある木の実などを平等に分けるときに使っていたのかも知れない。

 狩猟採集時代、いわゆる原始時代にも石などに傷をつけることで、数を数えたり素数(1より大きな自然数)への理解はあったらしい。農耕がはじまり古代文明が生れると数学は急速に発達し、最古の文明であるシュメール文明の時代でさえ分数や代数、三次方程式といった計算を行っていたことが、古代の粘土板からわかっている。

 シュメール文明の数学をバビロニア数学というが、バビロニア数学は現代にも強く影響している。バビロニア数学は60進法を使っていたのだが、これが現代の1分60秒、1時間60分はこの最古の文明から使われているのだ。

 彼らはこの数学を使って、巨大な神殿やピラミッドを作ったことはいうまでもない。




●数というものはこの世に存在していない

 現代の科学文明もまた、そのほとんどを数学を利用することで成り立っている。それは俗にいう理系の科学だけではなく、文系といわれる科学でも、例えば哲学や心理学、経済学、考古学といったものも数学ができなければその深奥に達することは難しいという。

 それは数学が、難解であるものごと比較的カンタンに表す「記号」であり、世界共通の「言語」でもあるからだ。

 ただ、おもしろいことにこの世の中に「数」というものは存在しない。

 1個のリンゴは存在しても「1」なるものは存在しない。何かを計算するときに点や線を使って計算することがあるが、この世にその「点」や「線」などは存在しないのだ。

 我々の世界というのは、そんな存在しないもので作られていることが実におもしろいではないか。



●ゼロの発見

 その象徴が「0「ゼロ」)であるとぼくは考えている。数学における「0」の発見は7世紀のインドで発見されたといわれる。それまで数学にゼロの概念がなかったのだ。その一つの証拠として、いまでも時計などに使われるローマ文字には「ゼロ」がないことからもわかる。




(ローマ文字による時計)



 インドで発見された「ゼロの概念」はやがてアラブのイスラム社会に伝わり、中世になってからヨーロッパに伝わったという。

 インドには仏教思想があり、その中に「空(くう)」という考え方がある。

 仏教のおける「空(くう)」は、まったく何も無いという意味ではなく「在るが無い」「無いが在る」といった幻のようなものがあるという思想である。いわゆる「色即是空 空即是色」の考え方である。

 ゼロより下の数を負数というが、リンゴ1個は考えられる。リンゴ0個もわかる。ないのだから。


 しかし0個以下の計算は必要ないと考えられていたようだ。しかしゼロの概念がしっかりしたことで「無いが在る」ものを計算するようになった、負数の誕生である。

 ゼロや負数の発見が仏教の「空」の思想がきたことはとても興味深い。

 ソクラテスプラトンも哲学者でありながら、数学者であった。プラトンは「プラトンの定理」を残し、ソクラテスは「数学の正しい答えを多数決で決めることがあるか? 善悪の判断も同じことである」という名文句を残している。


 ソクラテスプラトンも釈迦も「空」の思想を考えたナーガールジュナ(龍樹・1〜2世紀の仏法僧)、形而上学的な在るが無い、無いが在る物について考えた人でもあった。

 そもそも「数」そのものが、無いが在る、在るがない存在なのだ。もちろんその中に、負数も虚数(イマジナリーナンバー、想像上の数)も、在るが無いようなものなのだからおもしろい。

 この在るが無い、しかし無いが在る「数」というものが、人類史に大きな影響を与え、現代の科学文明の基礎になっているのは、本当に不思議なことだ。



巨椋修(おぐらおさむ)拝


わたし(巨椋修(おぐらおさむ))が監督した映画『不登校の真実〜学校に行かないことは悪いことですか? 』DVDになりました。
精神科医不登校に携わる皆さんにインタビューをしており、問題解決のヒントになれば幸いです。
TSUTAYA』のドキュメンタリーコーナーにも置かれておりますのでご覧になってください。


●巨椋修(おぐらおさむ)の著書



ビックリ!おもしろ聖書物語 (リイド文庫)

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新版 丹下左膳

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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。

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