子どもの頃、時代劇を観ていてよく思ったのが「この正義の味方たちは、毎週毎週、平気で大量殺人をするなあ」であった。
しかも、素浪人とかが旅をしているストーリーでは、10人以上の悪党どもをバッタバッタと斬り殺した後、いかにも良いことをしたとばかり、街道を高笑いしながら旅を続けるというエンディングは定番であった。
ちなみに現在日本の殺人被害者は年間350人程度で年々減少傾向にあり、一年は52週間である。
正義の素浪人が、時代劇で毎週10人ずつ悪党どもを斬り殺したとしたら10人×52週間=520人という大量殺人を犯しているということになる!
実際は、プロ野球や特別番組で番組がお休みのこともあるから、仮に年間の番組が40回だとしても、合計400人だから、現在における全日本の年間殺人被害者総数以上の人を殺しまくっているということになる。
しかし毎週大量殺人を犯す時代劇の主人公たちの精神状態は普通ではないはずだ。米陸軍退役中佐で、陸軍士官学校心理学教授で、殺人心理学者であるデーブ・グロスマン氏によると、
(戦場において) 「殺される恐怖よりも、むしろ殺すことへの抵抗感が強く。殺せば、その重い体験を引きずって生きていかねばならない。でも殺さなければ、そいつが戦友を殺し、部隊を滅ぼすかもしれない。殺しても殺さなくても大変なことになる。これを私は『兵士のジレンマ』と呼んでいる」
とのこと。さらに
「第二次大戦中、日本やドイツで接近戦を体験した米兵に『いつ』『何を』撃ったのかと聞いて回った。驚いたことに、わざと当て損なったり、敵のいない方角に撃ったりした兵士が大勢いて、姿の見える敵に発砲していた小銃手は、わずか15〜20%でした。いざという瞬間、事実上の良心的兵役拒否者が続出していた」
というのだ。これにはさすがの軍部が困り、訓練の方法をかえることで、ベトナム戦争では95%の兵士がちゃんと狙って人が撃てるようになったという。
そしてこれらの兵士は、兵役が終わって一般生活に戻ったら大量殺人者になるのではなく、むしろ戦争にいっていない人に比べて殺人を犯す確率は低かったという。
つまり戦場という特別な場のみ仮借なく殺人ができる、時代劇の主人公のようになったというわけだ。逆にいえば時代劇の主人公たちはどんな訓練を受けていたんだろうね。
(何人斬り殺したんだろう。でも錦之助さんはかっこいいなあ)
巨椋修(おぐらおさむ)拝
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巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。
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