巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

曳き家体験記2 荷下ろし地獄変


●酷暑のなか、曳家道具をトラックから降ろす

7月16日、その日の早朝、私は首都圏のある駅にいた。本日、高知県からトラック2台で送られてくる大量の曳家道具を荷下ろしをするのだ。



やはり手伝いに来てくれていたスーツアクターのフジモトさんと一緒に、迎えにきてくれた岡本さんの弟子である飯田さんに現場にトラックで送ってもらう。



現場近くには、トラックに満載されている曳家道具。アピトンといわれる枕木、家を持ち上げるジャッキ、どんな用途なのか想像もつかないいろいろな形の鉄板たちがこれでもか! と言わんばかりに積み上げられている。



きのうの深夜、台風の中土佐の高知で、荷を積み込み、一晩かけて首都圏に持ってきたのだという。



荷物はどれもこれも重量感満載であり、その重量感満載の道具たちを雨の中、荷上げするのはさぞ大変だったろうなと、そのときはのほほんと考えていた。直後に、荷上げほどではないにしても、荷下ろしをするキツさを、まだ感じていなかったのだ。



●最大の敵、真夏の太陽

やがてトラックの運転手さんも加わって、荷卸しがはじまる。荷のひとつひとつが、とても重いのだ。たちまち全身から大量の汗が噴き出してくる。



週刊漫画誌週刊漫画TIMES』にて連載中の『解体屋ゲン』(こわしやゲン)の原作者、星野茂樹さんも自動車でかけつけて荷下ろしに参加。取材を兼ねてお手伝いに来てくれたらしい。前回も描いたが、曳家の岡本さんは、漫画『解体屋ゲン』に実名登場しているのだ。


(※実名登場した漫画を持つ岡本さん)


弟子の飯田さんも漫画に登場している。


(※ご自身が登場しているシーンと飯田さん)


これらのメンバーが、それこそ全員、大量の汗を流し必死になって大量の曳家道具を下していく。


空には、凶暴ともいうべき真夏の太陽がギラギラを我々を照り付け、我々のスタミナと水分を奪っていく。


40度近い酷暑の日でもあったのだ。



(※休憩時間にパチリ。このときはまだ余裕があった(苦笑))



●20年ぶりくらいに脱水症状を体験

重い荷物を下ろし、さらにそれを定位置に置いていくという作業が延々と続く。



昼が過ぎ、午後になったころ、最初に握力が悲鳴を上げだしてきた。そして水分を補給しても補給しても、流れ続ける汗、汗、汗。



飯田さんが


「あ、足が釣りゆう」


と言い、すると漫画原作者の星野さんも


「ぼくもさっきから指が釣ってねえ」



と笑いながら言った。



かくいう私も、足の親指と手の指が、若干釣り気味である。さらに少しばかり頭痛がする。これは明らかに、脱水症状である。それでも作業は続く。そういえば、岡本さんが


「実はこの荷下ろしが一番キツいんですよ」


と、言っていたのを思い出した。なるほど。確かにキツい。脱水症状を体験したのは、空手選手の現役の頃、減量に苦しんでいたとき以来約20年ぶりであった。



●土佐弁はとても優しい言葉

やがて夕方になり、作業が終わるときがやってきた。


不思議なことに、肉体的にとてもキツい作業であったにも関わらず、全員けっこう明るく冗談などを言い合い、実に楽しく作業をしていたのだ。


これは親方である岡本さんの人徳であろう。弟子である飯田さんにも決して乱暴な言葉がけはせず、敬語まじりで話しかけるのだ。


おもしろかったのは、トラックの運転手さんも含めて、作業をしている人の半数が生粋の土佐人である。


私は生まれて初めて、ネィティブの土佐弁というのを聞いたわけだが、土佐弁というのはほとんどの人が、坂本龍馬が喋る「龍馬語」であると思っているのではないだろうか? しかしテレビや映画、小説に出てくる龍馬が喋る言葉は、あくまで「龍馬語」であって、ネィティブな土佐弁ではない。


このとき私が持った印象は、土佐弁は「土佐っぽ」「土佐のいごっそう」といった豪快で荒々しいイメージとは違って、とても優しい言葉なのだなあということである。




●作業中、誰もおしっこにいかなかった


やがて日が傾き、一日の作業が終わった。私とフジモトさんは漫画原作者の星野さんの車で自宅近くまで送っていただいたのだが、そのとき星野さんが


「どうします? どこかでラーメンでも食べていきますか?」


と、言ってくれた。


しかし私もフジモトさんも、「いや〜、疲れすぎて、あんまり食欲はないですね〜」というと、星野さんも、「実は私も食欲ゼロなんですよ」をお互いに苦笑いしたものだ。


そのときふと思った。


「ねえ、星野さん、フジモトさん、きょう作業してからオシッコにしました?」


「そういえば、朝起きたときから一度のしてないですねえ」


と、二人ともいう。


私も、一度もしていない。


しかしみんなおそらく3〜4リットル以上の水分は、摂っているいるはずなのだ。いかにその日が暑く、大量の汗を流したかがわかるエピソードであろう。




(※一日の仕事が終わった後の写真。右から私、岡本さん、星野さん。キツかったけど結構楽しい一日でした。
ちなみに後ろに写っているのがアピトンという枕木。さらに後ろの赤いのは鉄骨。実はこの写っている量の何倍もあります)





(協力:曳家岡本)

(つづく)







巨椋修(おぐらおさむ)拝

【脱力系TV! 生きぞこない なう!】のお知らせ。

毎月第2水曜日、午後9時放送。

↓コチラのマッハTVよりご覧いただけます。
http://ch.nicovideo.jp/machtv



スタジオ観覧のご希望(観覧料1000円)、番組で取り上げて欲しいテーマ等は

machnumberproduction@gmail.com

件名『行きぞこない』までお願いします。

巨椋修(おぐらおさむ)は陽明門護身拳法という護身術&総合格闘技の師範をやっています。

陽明門護身拳法のHPはコチラ。門下生募集中!
http://members3.jcom.home.ne.jp/yohmeimon/


門下生募集中!お問い合わせは osaogu@yahoo.co.jp まで。