巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

原発事故陰謀論と稲葉町前町長


前回、『美味しんぼ鼻血事件と陰謀論者の共通点』、というのを書いた。


その時点では、単純にいわゆる【放射脳】と揶揄される人たちと、【オカルト陰謀論者】が似ていると思って書いただけのことであった。


ところが……だ。


美味しんぼ鼻血事件に登場する稲葉町前町長が、東日本大震災が起こる8日前に「政府と東京電力東北電力と日本原電が(地震津波が起こることを知っていたのに)発表を止めてしまった」という動画がアップされていたのである。



これにはさすがにビックリした。


発言の内容は以下の通りである。


動画の3分45秒から観ていただきたい。

あのー、今日はもう一つ、とんでもないことを喋らせていただきます…。


2011年、津波のあった年の3月3日、3月3日に地震津波のあることを日本政府は知ってました。


知っていたんですよ。

8日前に、地震津波の8日前に知ってました。


しかし、それを止めたのは、政府と東京電力東北電力と日本原電が発表を止めてしまったのです。
こんなことって許されますか、みなさん。


国民が知らなければならないのに、この電力会社によって、電力会社の都合によって、津波地震情報が止められたんです。


恐らく、死ななくてもいい人がいっぱいいたんじゃないでしょうか。


これは、青森から千葉県まで、津波に遭って亡くなられた方のことを思うと、無念で無念でなりません。


もちろん、8日もあれば、東京電力は、地震津波への予防対策もできたんじゃないでしょうか。

それもしないで、津波のせいにして、原発が壊れたのは津波のせいにしてしまったことは許せないんですよ。


あの(3月)11日のときは、私たちはパニックでした。


本当に、どうしていいか分らない。


津波から避難する、原発事故から避難する、パニックの最中でしたけれども、3月3日、あの日の8日前に、地震津波のことを分かっていた。そういうことに対して、みなさん、私たちは一方的に犠牲者にされたんです。


これは文字通り「政府や電力会社が知っていてだまっていた陰謀である」と、言っているのに等しい。


ただし、その根拠も理由も語ってはいないので説得力はゼロである。


もちろん、現代の科学では地震予想はできても、地震予知は極めて困難。ほとんど不可能といってもいい。


それにも関わらず「地震津波が来ることを政府や電力会社等が8日前に知っていた」というのは、まさにオカルトの世界である。

あるいは、人工地震とか地震兵器のことを指しているわけでもあるまい、これもオカルト陰謀論でよく言われるところである。


被害者である前町長は、おそらくこのことを本気でそう思って語っているのだろう。正直、前町長を責める気はないが、論理的に政府にしても東電にしても

地震が来るのを知っていて政府や電力会社が発表を止めた」

というのは、さすがにうなずくことはできない。

政府にしても、電力会社にしても、それで得をすることは何もない。むしろ、地震の後に政府与党は野党に落とされ、電力会社は大損害を受けているのだ。


まさか「世界を牛耳っている闇の権力が・・・」などというのでもあるまい。これもオカルト陰謀論である。


どういう根拠で前町長がこのようなことを言ったのかは不明だが、いささか痛々しいというのが本音だ。


正直な感想をいうと、これはもう「被害者意識」ではなく「被害妄想」なのではないだろうか?


とはいえ、前町長を責める気持ちにはなれない。おそらく彼は本当にそうだと思っているし、こういうことを公表することが、真実を伝えることだと思っているのであろう。

また、大きな被害を受けた町の町長であったことから、大変心を痛め、やり場のない怒りをもっておられるというのもお察しする。

前町長が鼻血が出ているというのも本当だと思うし、倦怠感に苦しんでいるというのも本当だと思うけど、さすがにこれはいただけない。



むしろ、信用を落としてしまうのではないだろうか?

こういう【放射脳】とか【原発カルト】などといわれても仕方がないことを力説すると「原発放射能被害をどうにかしなきゃ」と思っている人たちにとって、まったく逆効果であると思うがどうであろうか?




そういえば地震の2ヶ月ほどあとのオカルト番組に出演したとき、ちょっとだけだが「オカルト陰謀論」について語ったことがあるので紹介しておこう。




巨椋修(おぐらおさむ)拝