巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

再録富山奇行9 助監督アベ見つかる

※これは10年前、自主映画「不登校の真実」を撮ったときの日記。

久しぶりに読んだら面白かったのでアップします。(笑)



「ほらぁ、オグラさんが、コキ使うからアベさん逃げちゃったぢゃないですかぁ〜」

不登校経験者の一人が笑いながら言った。

部屋の一同がどっと笑った。

そう……

その時点までは、全員助監督アベが逃げたというのは、冗談のつもりだったのだ。

しかしアベはさらに30分たっても、1時間たっても帰ってこないのである。

携帯電話は相変わらす通じない。

オレは少しアセッてきた。

何度か携帯に電話を入れる。

やっぱり出ない。

小杉町の町長と会う時間は刻一刻と迫ってきている。

ますますアセッてきた。

「ホントに逃げたんじゃないの?」

不登校経験者がポツリとつぶやいた。


こんどは誰も笑わなかった。


携帯に電話をする。


出ない。


電話をする。



出ない。



電話をする。



出ない


電話をする。




出やがった!!




「おめ〜ッ、いまどこにいやがるんだ。まだ富山か!?」

「は? なんのことですか?」

「まあいい。なにやってんだ?」

「撮影に使うイヤホンを買おうと思って、電気屋さんを探してるんですが、なかなか見つからなくって、いまやっと見つけたところです」

「イヤホンって、コンビニとかでも売ってんじゃねーの?」

「いや〜、自分の欲しい型がなくって、町中歩きましたよ。富山って電気屋さんが少ないんですね〜。でも大丈夫! 300メートル先に見つけましたから!!」

「ええい! その300メートル往復している時間が惜しい! いますぐ走って帰ってこい!!」

「え〜!? あと300メートルなのにぃ〜」






「ぢゃかあしいわい!! もうすぐ小杉町の町長との取材があるんぢゃい!! 遅れるだろーがぁぁぁ!!」






「は、はい、そうでした。走って帰ります」


こうして我々は、慌てて帰ってきたアベと、テレビ局の撮影クルーと共に、小杉町の町長との取材・会食へと車を発車させたのある。


つづく