※これは10年前、自主映画「不登校の真実」を撮ったときの日記。
久しぶりに読んだら面白かったのでアップします。(笑)
「あの……、それは我々の映画作りを密着取材して、テレビのドキュメント番組を作るというモノなのでしょうか?」
I記者は、当たり前ですと言わんばかりの笑顔で答えてくれた。
「はい、もちろんです」
オレがいま撮ろうとしている映画は、半分ドキュメント、半分ヤラセの半ドキュメント映画なのだ。
すると、我々もI記者たちが我々をドキュメントを撮ろうとしている姿を撮って、いかに不登校をテーマにした映画をドキュメントにするドキュメント番組が作られていくかを、ドキュメントしていくという作戦にしてみれば、結構おもしろくなるのではないだろうか?
そのうちお互いをお互いが追いかけて、一本の木の周りをぐるぐると走り、バターになってしまうかも知れない。
(なんて書いても、若い人にはわかってもらえないのだろーなー)
とにかく、その日は新聞各社やテレビ局の方々に、次から次にインタビューを受け、何がなにやらわからないうちに夕方になっていたのだ。
テレビの人たちは、6時のニュースに流しますから、といって、嵐のように去っていく。
マスコミの皆さんがいなくなったS
高校の一室で、オレや不登校経験者の若者達は、なにやらボーゼンとしていた……
オレは誰にいうとなく、つぶやいた。
「なんか疲れたなぁ……」
不登校経験者の若者の一人が、ぼんやりとしながら、答えていた。
「そうですね……」
「やっぱり、カメラに撮られると魂が抜かれるのかも知れないね、こんなに疲れるんだから……」
そんな話しをしていると、朝からずっと撮影をやっていた助監督アベが、ちょっといいですかとやってきた。
別室に行くと、朝から撮影をしていた一部が、機材の接触不良で音声が入っていないことに気が付いたのだ。
一部とはいえ、朝からの労働が無駄になったのである。
しかもマスコミに取材をされているというシーンは、なかなか撮ろうと思って撮れるものではない。
アベは、ひどく落ち込んでいた。
幸い、音声が切れていたのは、大した場面ではなかった。
オレはアベに気にするなといったところ、アベはただだまって、うなずくばかりであった。
しばらく、オレとアベは、不登校経験者の若者達と世間話をする。
そうしていると、アベが
「コンビニに買い物に行ってきます」
と、我々の前から姿を消したのだ。
やがてアベは1時間たっても帰ってこない。
はやく帰ってこないと、次の予定である、小杉町の町長と、取材をかねた会食の時間が、迫ってきているのだ。
アベの携帯に電話を入れてみる。
出ない。
オレは思わず、つぶやいた。
「奴隷が逃げた……」
つづく