※これは10年前、自主映画「不登校の真実」を撮ったときの日記。
久しぶりに読んだら面白かったのでアップします。(笑)
富山の刺身は美味い。
特にしろエビというのが、結構いける。甘エビとは少々違う優しい甘味があるのだ。
やがて一次会が終わると、二次会へと流れることになる。
その場所には、ビデオデッキがあった。
そして助監督アベのカバンの中には、数年前アベ自身が、5年の歳月と500万円の自費をつぎ込んだ自主ビデオ映画『ヒットマン』をビデオカセットを忍ばせてきているのを、オレは知っていたのだ。
なぜならば、オレ自身が嫌がるアベに、この自主ビデオ映画を持ってくるように厳命をしていたからだ。
今以上に機材の無い中、アベが監督主演したこの映画をみなさんに観ていただくことによって、最低でもこれくらいの映像は、撮れるという証明にもなるからである。
(もちろん、この映画がもの凄くウケることは読んでいた)
アベはシブシブ、自分が監督・主演をした『ヒットマン』をビデオカセットに入れた……。
ストーリーは、腕利きの殺し屋コンビがいて、その殺し屋のうち一人が、撃ち合いで殺されてしまう。
親友をなくしたもう一方の殺し屋は、絶望し、自らのコメカミに銃口をあて、自殺を図るのだが、次に気がついたときは、十数年前にタイムスリップしており、まだ殺し屋にもなっていない時代を生きる、若き日の相棒と、出会うというものだ。
話しは、タイムスリップ以外、すべて超・スーパー・ウルトラ・どすこいハードボイルド作品である。
アベと相棒が扮する殺し屋ときたら、もちろんダーク・スーツにサングラスである。
ちなみにアベは小太り体系で、相棒はスマート……
ここまでいえば、いえばある映画がアタマをよぎるではないか。
そう……
ブルース・ブラザース
である。
このブルース・ブラザースが、思いっきりしかめっ面をして、ハードボイルドを演ずるのだ。
(相棒の人は、カッコいいし、ハードボイルドシーンが板についているのだが、アベの場合は……、いえ、すばらしい演技でした)
これはすでに
もの凄いパロディ!!
もう富山の夜は、爆笑、爆笑、大爆笑である。
笑いを取るつもりではなく、マジに大熱演であるだけに、余計に笑える。
笑っていないのは、赤くなってもじもじくんになっているアベのみである。
その姿と画面のハードボイルドアベとを見比べてみると、一粒で2度笑えるとはこのことといっても過言ではない。
これは後日談になるが、我々が泊まっている学校へ、この『ヒットマン』のウワサを聞いたある記者が
「ぜひそのおもしろいビデオ映画を観てみたい」といって夜遅くやってきたくらいである。
その記者も涙を流しながら大笑いしたのは、いうまでもない。
アベも過去、一度も複数の人たちに公開していないこの自主ビデオ映画が、遠く富山で大受けするとは夢にも思っていなかったにちがいない。
(しかもギャグとして)
この映画のおかげで、アベは一気に人気者になってしまった。
実際、アベの目つきは殺し屋そこのけに悪く、またアベ自身、以外なほどシャイなため、初めての人と打ち解けるのが苦手なのだが、一本の自主映画が彼を人気者に押し上げたのだ。
まさしく芸は身を助けるとはこういったことをいうのだろう。
そう、アベは遠く富山にきて、スターになったのである。
つづく