巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

再録「富山奇行3 さあ怒涛の時間のはじまりです

※これは10年前、自主映画「不登校の真実」を撮ったときの日記。

久しぶりに読んだら面白かったのでアップします。(笑)



男子トイレ……

そう書かれたドアを、K先生はサワヤカな笑顔で開けてくださった。

と、

そこには……、総タイル張りの床。

コンクリートの壁。

そう、オレが、昔から何度も利用した、そこには学校のおトイレが、存在していたのだ。

ただ、その男子トイレの場合、ドアを開けると、洗面専用の部屋があり、さらにその部屋には、ドアが二つついている。

そのうちのひとつのドアは半開きになっており、そこには確かに、男子用の便器が見えるのだ。

それを見てオレとアベは思った。

(やっぱり今日からココに泊まるのだな……)

我々の戸惑いは一瞬であった。

旅行にいって、どこかのトイレに泊まる。

これはもう、ちょっとしたハナシのネタである。

このネタは伝説になる。

伝説は神話になる。

オレとアベは

生きながら伝説の男となり、生きながら神話の世界の住人になるのだ。

そこまでオレたちの妄想が膨らんだとき、K先生がもうひとつのドアを開けて言った。

「こちらです」

と、その部屋に入る。

そこは、トイレではなく、和室が二間、別室にはまだ新しい洋式トイレと、バスルームがある。

学校の奥深くに、男子トイレがあり、その男子トイレのさらなる奥に、謎の隠し部屋のごとく、清潔な客間があるのだ。

これこそまさしく



学校の怪談!!



(ちなみに、このS高校の横浜校は、本当に映画『学校の怪談』にロケ地を提供しているのだ)


オレとアベは、とりあえず荷物をその和室に置かしてもらっていると、ミヤカワ氏がいった。

「ぢゃ、いきましょうか」

我々は、何が何やらよくわからないまま、K先生の運転する車に同乗する。

「で、どこへ行くのです?」

と聞くオレに対して、ミヤカワ氏は、何をいまさら聞くのだといった風情で

「これから毎○新聞にいって、この映画について取材をしてもらいます」

ほえ?なんの心の準備もないぞと、言う間もなく、車は毎○新聞富山支局に着き、そのまま取材を受け、この自主映画の意義や主旨などを聞いていただくことができた。

一通りの取材を受けた後、また車にのると、K先生がいった。

「少し早いけど、車を置いたら軽くイッパイやりましょう」

ほっとするねぎらいの言葉である。

その間、非常識講師のミヤカワ氏は、どこかへ携帯で電話をしている。
やがて、携帯を切ると、こともなげにこういったのだ。

「オグラさん、ラジオの生放送が決まりました、月曜の朝8:40からですから、忘れないでくださいね……」

新聞社から取材を受けるという話しは聞いていたが、ラジオは初めてである。

これらの事々が、我々が富山入りしてわずか1時間ほどの間に起こったことなのだ。

まだ怒涛の富山奇行ははじまったばかりなのである。

                                   つづく