※これは10年前、自主映画「不登校の真実」を撮ったときの日記。
久しぶりに読んだら面白かったのでアップします。(笑)
男子トイレ……
そう書かれたドアを、K先生はサワヤカな笑顔で開けてくださった。
と、
そこには……、総タイル張りの床。
コンクリートの壁。
そう、オレが、昔から何度も利用した、そこには学校のおトイレが、存在していたのだ。
ただ、その男子トイレの場合、ドアを開けると、洗面専用の部屋があり、さらにその部屋には、ドアが二つついている。
そのうちのひとつのドアは半開きになっており、そこには確かに、男子用の便器が見えるのだ。
それを見てオレとアベは思った。
(やっぱり今日からココに泊まるのだな……)
我々の戸惑いは一瞬であった。
旅行にいって、どこかのトイレに泊まる。
これはもう、ちょっとしたハナシのネタである。
このネタは伝説になる。
伝説は神話になる。
オレとアベは
生きながら伝説の男となり、生きながら神話の世界の住人になるのだ。
そこまでオレたちの妄想が膨らんだとき、K先生がもうひとつのドアを開けて言った。
「こちらです」
と、その部屋に入る。
そこは、トイレではなく、和室が二間、別室にはまだ新しい洋式トイレと、バスルームがある。
学校の奥深くに、男子トイレがあり、その男子トイレのさらなる奥に、謎の隠し部屋のごとく、清潔な客間があるのだ。
これこそまさしく
学校の怪談!!
(ちなみに、このS高校の横浜校は、本当に映画『学校の怪談』にロケ地を提供しているのだ)
オレとアベは、とりあえず荷物をその和室に置かしてもらっていると、ミヤカワ氏がいった。
「ぢゃ、いきましょうか」
我々は、何が何やらよくわからないまま、K先生の運転する車に同乗する。
「で、どこへ行くのです?」
と聞くオレに対して、ミヤカワ氏は、何をいまさら聞くのだといった風情で
「これから毎○新聞にいって、この映画について取材をしてもらいます」
ほえ?なんの心の準備もないぞと、言う間もなく、車は毎○新聞富山支局に着き、そのまま取材を受け、この自主映画の意義や主旨などを聞いていただくことができた。
一通りの取材を受けた後、また車にのると、K先生がいった。
「少し早いけど、車を置いたら軽くイッパイやりましょう」
ほっとするねぎらいの言葉である。
その間、非常識講師のミヤカワ氏は、どこかへ携帯で電話をしている。
やがて、携帯を切ると、こともなげにこういったのだ。
「オグラさん、ラジオの生放送が決まりました、月曜の朝8:40からですから、忘れないでくださいね……」
新聞社から取材を受けるという話しは聞いていたが、ラジオは初めてである。
これらの事々が、我々が富山入りしてわずか1時間ほどの間に起こったことなのだ。
まだ怒涛の富山奇行ははじまったばかりなのである。
つづく