※これは10年前、自主映画「不登校の真実」を撮ったときの日記。
久しぶりに読んだら面白かったのでアップします。(笑)
「あのな……」
と、オレはアベにいった。
「もう一度いっておくけど、この映画は、自主映画で、スタッフ、キャストは一文も出ないどころか、いざとなったら持ち出しになるような作品なんだよ」
「わかってます」
「助監督というお仕事はな、言ってみれば監督の奴隷のようなものなのだよ。凄くキツイお仕事なんだよ」
「わかってます。師匠、自分を師匠の奴隷にしてください」
「ま、それくらいのカクゴがあるなら、ま、いーか」
「ま、いーです」
と、いうことでアベはこの映画の助監督に決定したのである。
そして数日後、オレとアベは、東京駅にいた。これから富山で取材をするのだ。
新幹線の中の二人は、いつになくはしゃいでいたものだ。まるで、これから遠足にいくガキのように……
しかし、富山は遠かった。
我々は富山に到着したころには、はしゃぎすぎたツケとして、グッタリとしてしまっていたのである。
我々は、このときはまだ、この富山行きが
前代未聞、空前絶後
の強行軍になろうとはだれも想像していなかったのである。
富山につくと、富山大学非常識講師として有名な、ミヤカワ氏が迎えにきてくれていた。
ミヤカワ氏の案内で、我々は富山での宿に連れていってもらう。
宿といっても、ホテルや旅館ではない。
S高校富山学習センターという、高等学校内に宿泊させていただくことになっているのだ。
学校につくと、まず職員室にいき、先生方にご挨拶をする。
職員室には、M谷先生という美人教師や、M出先生という体育の先生がいらっしゃった。
と、そこへ外からツカツカと職員室に入ってくるマッチョにして色黒。いかのも全身から
『ぼくはスポーツマンです』
という雰囲気を発散させているサワヤカ系の男性がやってきた。
この方が、S高校のセンター長(学校長)のK先生である。
我々は、K先生にこのたびお世話になるお礼とご挨拶を申し上げると、K先生はいった。
「いえいえ、気にしないでください。さて、これから皆さんに泊まっていただく部屋にご案内しましょう」
我々はK先生の後を、ついていく。
教室では、生徒の皆さんが授業を受けている風景がみえる。
そして2階廊下の一番奥の部屋を指差して、K先生が、サワヤカな笑顔でこういったのだ。
「この部屋が皆さんにお泊りいただく部屋です」
オレとアベは、一瞬目をパチクリとした。
なぜならば、その部屋のドアには、これでもかというくらい大きな字でこう書かれていたからだ。
男子トイレ……
と……
つづく