巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

9・11で死にぞこなった男

ある弟子がいる。


経歴がおもしろい。


準国立大学を首席から4番の成績で卒業し、日本の国防をつかさどる某省庁のエリートとして勤務。


北大西洋条○機構軍にも勤務していたという男である。


司法書士だの、行政書士だのといった資格ももっている。当然、英語も堪能である。


その後、某省庁エリートを辞め、フリーターに。


ぼくの道場に入門してきたのは、そのフリーター時代のことだ。


なぜか、彼は、自分の持っている資格をまったく利用せず、早朝のビル掃除のアルバイトをやって暮らしていたのだ。


道場にきたときは、毎回のように、同僚であるパートのおばちゃんとの、バトルを愚痴っていたものだ。


彼は道場に入門するとき


「格闘技は初心者なんです」


などとのたまわっていたのだが、大嘘であった。




国防をつかさどる人を養成する準国立大学、体育会空手部出身。


国防をつかさどる省庁の、軍隊格闘技西日本チャンピオンであった。





さて、そんな彼であるが、うかつにぼくの道場に入ってしまったがために、ぼくとの共著書や、彼自身の著書を書いたり、格闘技雑誌『G』誌に、記事を書くようになる。



しかし、それだけでは食えないので、彼はあいかわらず、掃除のアルバイトをし、パートのおばちゃんとバトルを繰り返していたのである。



それがある日、ぼくのところにやってきて「相談がある」と言ってきたのだ。



「巨椋先生、某有名出版社から、軍事関係の翻訳をするために、うちの会社に入社しないかという申し入れがあるんですよ」



「いいじゃないですか。いま掃除のアルバイトをしているわけで、出版社勤務の方が、生活も安定していいんじゃないですか?」



「それが……、勤務地がワシントンなんです」



「ワシントンってアメリカの?」



「はい、ワシントンDCのアメリ国防省内で勤務だそうです」



ペンタゴンじゃん!おそしろそうじゃん!」



「ええ、でも……」




彼は悩んだあげく、師であるわたしの言うことを聞かず、結局、その仕事にはつかなかったのである。


その1ヶ月後……


師であるわたしのいうことを聞いていれば、勤務していたはずの、アメリ国防省庁、ペンタゴンに、同時多発テロのジェット旅客機が突っ込んだのである。



わたしは思わず言ったのです。





「ちっ!」





いやあ、彼があのままペンタゴンに行っていれば、おもしろいことになったかも知れないのに!



うまく死にぞこないやがった。(笑)





これは彼の著書。



これらはぼくとの共著です。