ある弟子がいる。
経歴がおもしろい。
準国立大学を首席から4番の成績で卒業し、日本の国防をつかさどる某省庁のエリートとして勤務。
北大西洋条○機構軍にも勤務していたという男である。
司法書士だの、行政書士だのといった資格ももっている。当然、英語も堪能である。
その後、某省庁エリートを辞め、フリーターに。
ぼくの道場に入門してきたのは、そのフリーター時代のことだ。
なぜか、彼は、自分の持っている資格をまったく利用せず、早朝のビル掃除のアルバイトをやって暮らしていたのだ。
道場にきたときは、毎回のように、同僚であるパートのおばちゃんとの、バトルを愚痴っていたものだ。
彼は道場に入門するとき
「格闘技は初心者なんです」
などとのたまわっていたのだが、大嘘であった。
国防をつかさどる人を養成する準国立大学、体育会空手部出身。
国防をつかさどる省庁の、軍隊格闘技西日本チャンピオンであった。
さて、そんな彼であるが、うかつにぼくの道場に入ってしまったがために、ぼくとの共著書や、彼自身の著書を書いたり、格闘技雑誌『G』誌に、記事を書くようになる。
しかし、それだけでは食えないので、彼はあいかわらず、掃除のアルバイトをし、パートのおばちゃんとバトルを繰り返していたのである。
それがある日、ぼくのところにやってきて「相談がある」と言ってきたのだ。
「巨椋先生、某有名出版社から、軍事関係の翻訳をするために、うちの会社に入社しないかという申し入れがあるんですよ」
「いいじゃないですか。いま掃除のアルバイトをしているわけで、出版社勤務の方が、生活も安定していいんじゃないですか?」
「それが……、勤務地がワシントンなんです」
「ワシントンってアメリカの?」
「ペンタゴンじゃん!おそしろそうじゃん!」
「ええ、でも……」
彼は悩んだあげく、師であるわたしの言うことを聞かず、結局、その仕事にはつかなかったのである。
その1ヶ月後……
師であるわたしのいうことを聞いていれば、勤務していたはずの、アメリカ国防省庁、ペンタゴンに、同時多発テロのジェット旅客機が突っ込んだのである。
わたしは思わず言ったのです。
「ちっ!」
いやあ、彼があのままペンタゴンに行っていれば、おもしろいことになったかも知れないのに!
うまく死にぞこないやがった。(笑)
これは彼の著書。
これらはぼくとの共著です。