巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

トランプはなぜエルサレムを首都認定したのか

●2017年はイスラエルにとって節目の年

 2017年1月20日アメリカ大統領史上もっとも変わっている男が大統領となった。ドナルド・トランプ氏である。そして同年12月、トランプ大統領はこれまでのアメリカ大統領が決してしなかったことをする。


 イスラエルの首都をエルサレムに認定宣言をしたのだ。


 そもそもイスラエルは、イギリスからイスラエル国を支持するというバルフォア宣言から丁度100周年にあたる年であり、また1947年、国連総会でパレスチナ分割決議を賛成多数で可決して丁度70周年にあたる年であり、さらに1967年、イスラエル軍がエジプトなどに奇襲し、エルサレムを占領して丁度50周年なのである。


 さて、トランプ氏は大統領に就任してから、いろいろと苦戦をしているわけであり、当然、支持率も落ちているわけである。


 トランプ大統領としては、なんとか挽回したいところ。そんなトランプ氏には、大きな支持団体と支持者がいた。




ユダヤ人資本家とキリスト教原理主義

 まず、大統領選のときに応援してくれたユダヤ教資本家たちである。イスラエル国最大支援者はアメリカに住んでいるユダヤ人資本家であり、当然、かれらはエルサレムイスラエルの首都にしたいと考えている。(イスラエルの首都はテルアビブ)


 ちなみにアメリカでは企業や労働組合が、直接政治家や政党に献金することが禁止されている。そこで彼らは政治資金団体を作り、そこを通して献金するようにした・・・ といっても政治家や政党に対する献金は個人で年間最高5000ドル(約50万円)程度のかわいいもの。


 しかし、自由の国アメリカ。政治家や政党を支持したり献金するのも自由であってもいいのではないかということになり、2010年スーパーパックという無制限に献金してもいい制度を作った。


 すると文字通り現金な政治家たちは、こぞって、共和党民主党も「私や我が党に献金してくれれば、イスラエル国を応援しまっせ〜」というようになった。



イスラエルの国旗)


 そうやって大統領になったのが、トランプさん。そのトランプさんにはもうひとつ大きな支持団体があった。


 それがエヴァンジェリカルと言われるキリスト教福音派の人たち。


 いわゆる聖書に書いていることは、文字通りすべて真実と信じているキリスト教原理主義の人たちだ。その数、ザクッと1億人!


 アメリカではいまでも多くの州で、進化論を教えることが禁止されているが、進化論に反対しているのがこの人たち。


 地球ができて46億年と考えられているが、キリスト教原理主義者は、そんなこと信じない。聖書には神は6日で作ったと書かれており、神の1日は千年だから6千年で地球ができたと信じている人たちなのだ。


 そんな彼らがトランプ大統領イスラエルを熱烈に支持しているのだ。



キリスト教原理主義ユダヤ人のカンケイ

 もともとキリスト教ローマ帝国の国教になった4世紀あたりからキリスト教徒、つまりクリスチャンのユダヤ人迫害ははじまったとされる。クリスチャンたちは、ユダヤ人を人間扱いしていないのでは? というほど虐めていじめてイジメぬいた。


 カトリックが堕落し、ルターやカルヴァン宗教改革をおこして、プロテスタントを作ったが、プロテスタントの人たちはカトリックの信者よりも、はるかにマジメであるため、なお一層差別し、殺し、虐め抜いた。


 時はルネサンスの時代、ルネサンスとは古代ギリシャ古代ローマのきらびやかで自由な時代に戻ろうよというん文明再興のことだが、この時代にフリーメーソンが誕生している。


 フリーメーソンの考え方は、カトリックだろうがプロテスタントだろうが、ユダヤ教徒であろうが他宗教の信者だろうが、一緒に仲良くやろうという団体で、『自由、平等、友愛、寛容、人道』を基本理念した友愛団体で、中世暗黒時代の権力者であったカトリックにしてもプロテスタントにても到底受け入れられる団体ではなく、当然秘密結社にならざる得なかったのである。


 さてさて、キリスト教原理主義プロテスタントから生れたもので、もっとも激しくユダヤ人を迫害していた人たちでもあった。


 それがなぜいまになって、ユダヤ教国である宿敵イスラエル国を応援しているのか?


 答えはカンタン、彼らは聖書に書かれたことを文字通りそのまま信じている人たちであるから。


 クリスチャンの本懐は何か?


 イエス・キリストの再臨(復活)であり、自分自身が神の国(楽園)に入ることである。


 ではキリスト教原理主義者は、どこにイエス・キリストが再臨すると考えたかというと、そこがエルサレム



エルサレムにあるイエス・キリストの墓。イエスは2千年前処刑されたとき、墓から蘇った。(正しくは三日後に女性の弟子たちが見にいったら墓が空っぽで、そのあとにイエスが弟子たちの前に現れる)当然、次の復活もエルサレムの墓から復活すると考える人がいてもおかしくはない)


 エルサレムユダヤ教の神殿があった場所であり、イエスが処刑された場所でもある。当然キリスト教にとって聖地中の聖地。イエスエルサレムに再臨すると考えたのがキリスト教原理主義者。


 トランプ大統領にとって、エルサレムイスラエル国の首都に認定するというのは、キリスト教原理主義者の支持をぐぐぐっと掴む一手でもあったわけ。


 これが、この時期にトランプ大統領が、エルサレムイスラエルの首都に認定した理由といえよう。



巨椋修(おぐらおさむ)拝