あまり人に言ったことはないんですけど、実はぼく、昔、宇宙人にさらわれたことがあるんです。
気がついたら、どこかの星でした。
なんでも、その星では地球人は、極めて珍しい珍獣でして、宇宙的には、地球人というのは、絶滅危惧種らしいんですね。
で、ぼくは、その星の動物園に収容されたんです。
なんといっても、珍獣ですから、その星では、凄い話題だったみたいですよ。
ガラス張りの檻に入れられていたんですが、もう毎日毎日、凄い見物人がきて長い行列が出来ていました。
え?
ぼくはもちろん、全裸ですよ。
檻の中ってのは、退屈なんです。
ブランコやタイヤとかが、あって、ぼくが退屈しのぎに、ブランコに乗ったり、タイヤで遊んだら、もう見物人は、「キャーキャー」騒いで、もの凄いカメラのフラッシュでしたね。
そんなこんなで、半年もしたら、どうもぼくにも、お嫁さんが必要とか言い出したらしくてね。
やっぱり地球のどっかから捕獲してきたらしい、メスを連れてきたんです。
それがねえ、美人だったらいいんですけど
ババアなうえに、えらいブサイクで……
参りましたよ。
どこの国から連れてきたのか、日本語は全然通じないしね。
いくらなんでも、その気なんて起きませんって。
ぼくにその気が、起きないものですから、その星のマスコミは
「地球人の交配は難しい」
とか、ニュースでやってたらしいですよ。
見物にきた、その星の幼稚園児たちは、大声で
「がんばって〜、はやく結婚して〜」
なんて、言ってるし。
偉い学者なんかは、
「メスの方が高齢なので、はやく交配しないと、この星から地球人は絶滅する!」
なんて心配してるし……
そのうち、その星の動物愛護団体が、
「地球人は、地球で生活するのが一番だ」
なんて社会運動をして、まあどこの星にも、グリーンピースみたいな過激派がいて、夜中に檻を破って、ぼくを地球に送り返してくれたんです。
あ、これってここだけの話しにしてくださいね。
変な人と思われたくないですから。