鍋…… それは夢
鍋…… それは憧れ
鍋…… それは気高く
鍋…… それは希望
ガスホースを調達した我々は、我がボロアパートに直帰するや、部屋の中央にあるコタツの上にガスコンロを設置。
失敬してきたガスホースを装着。
コンロに火をつけた。
火はボッという音とともに点火し、我々は初めて火を使った原始人のごとく感動したのはいうまでもない。
我々は、ラーメン鍋に具材をぶちこみ、熱燗が飲みたいヤツは、湯呑み(お銚子なんてものはないのだ!)に日本酒を入れて、そのままラーメン鍋の中に入れるのだ。
(ガスコンロが一つしかないのだから仕方ない)
これではラーメン鍋の中は、湯呑みの外に食材が泳いでいるというのが、実状なのだが、このさい気にしないのだ。
と……
そのとき……
である……。
仲間の一人が「ひゃーっ」という奇声をあげた。
それを見たオレも「ひゃーっ」という奇声をあげた。
みんな「ひゃーっ」という奇声をあげた。
なんと失敬してきたガスホースの3カ所ほどから
ぼーぼーと炎があがっているではないか!
そう…… ガスホースには無数の穴、ひび割れがあったため、そこからガスがもれ、発火したのである。
我々はあわてて火を止めた。そして仲間の一人がいった。
「オグラ、タライに水を張ってくれ!オレに考えがある!」
いまでこそ日本を代表する企業の最前線で働く企業戦士も、当時はただのバカだった。
なにをするのかと思ったら、タライの水の中にホースをつけ、空気を送りこむ、するとひび割れた箇所から空気の気泡がプクプクと出てくるのだ。
「オグラ、ガムテープはないか? テープでこのひび割れをふさげは、オレたちは鍋が喰える!!」
もはや鍋を喰うのも命がけである。オレはしっかりと彼に意見をしてやった!
「ガムテープはないが、セロテープならある。代用できるかな?」
「テープには違いないから、なんとかなるだろう」
オレたちは、ホースにセロテープをぐるぐる巻きにして、再び点火してみた。
無事に火がついた。
ガス漏れもないようだ。
我々は、その夜徹夜でドンチャン騒ぎをしたのはいうまでもない。
しかし……
みんな心のどこかで思っていたのだよ
「オレたち、ここで人生が終わるかも知れないな……」
と……
以上、良い子は決してマネしないように……