巨椋修(おぐらおさむ)の新世界

作家・漫画家 巨椋修(おぐらおさむ)のブログ。連絡先は osaogu@yahoo.co.jp

山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。

智(ち)に働けば角(かど)が立つ。

情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。

とかくに人の世は住みにくい。



住みにくさが高(こう)じると、安い所へ引き越したくなる。

どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩が生れて、画(え)が出来る。



人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。

やはり向う三軒両隣(りょうどな)りにちらちらするただの人である。


ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。

あれば人でなしの国へ行くばかりだ。

人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。

夏目漱石 『草枕』より―







平安時代、京の都に鬼が出没して人を喰らったという。

鬼の実態は、都に住む人である。

鬼は人を襲わないのだ。

鬼は人を恐れて山に隠れ住んでいるのだから。


悪魔もまた人を殺さない。

楽になれよと声をかけるだけなのだ。

従わないからと、人を殺すのは神である。



人の敵は人。

人の敵は神。


ならば、ひとでなしでいいじゃないか。


悪魔のように生きてみないか。




巨椋修(おぐらおさむ)拝