人の呼び方は難しい。
例えば、「貴様」
これは本来、「貴い人様」という意味で、決してケンカ用語ではない。
例えば、「お前」
これは、「御ん前」という意味で目上の人に使う言葉であった。
例えば、「キミ」
これは「君」で、やっぱり目上の人に使う言葉であったのである。
名前の後につける言葉に「クン、ドノ、サマ」というのがある。
「君、殿、様」のことで、君と殿は、本来はすべて目上の人に使う言葉であったのだが、現代では「君、殿」は同格・格下の人に使う言葉となり、目上に人に使うのは「様」のみとなっている。
現代では、常識的に「サン」というのが、通常使われており、一番無難な呼び方といえる。
ギョーカイでは、なぜか仲のいい相手には「チャン」をつける。
オレなぞは、「オグラチャン」と、呼ばれることも少なくない。
マンガ業界では、編集部が漫画家を「センセイ」と、呼ばなくてはならないとう所もある。
「センセイ」も無難な呼び方で、頭の悪い人になると「センセイ」と呼ばないと、医者・弁護士・政治家・教師などは機嫌が悪くなる人もいる。
関西弁になると、さらにややこしくなり、関西では相手のことを「ジブン」とか「ワレ」とか呼ぶのである。
ジブンは「自分」であり、ワレは「我」のことである。
だから関西人が
「自分は自分のことをどう思っとるねん」
といった場合
「アナタはボクのことをどう思っているのですか?」
という意味になる。
実にややこしい。
ややこしいというと、知り合いの女の子に、九段下花子(虚名)という人がいて、いつも九段下さんと呼んでいたのだが、あるとき
「そんな他人行儀の呼び方はイヤ、呼び捨てにして」
というので
「それでなあ九段下」
と呼び捨てにしたら、なぜかご機嫌をそこねたことがある。
人の呼び方は、ホントむつかしい……